2021/05/11
施工事例:平面化 ~一貫した方針に基づいた駐車場運営~

【工事概要】

施工事例 : 機械式駐車場平面化工事

所 在  : 東京都

属 性  : 分譲マンション(築24年)附置駐車場

撤去装置 : 単純昇降式(地上1段地下2段) 15台収容

 

【 背 景 】

今回のマンションは、ターミナル駅から最寄り駅まで一駅、最寄駅からマンションまでは徒歩5分と便利な立地のマンションです。便利な立地のマンションは、概して駐車場の稼働率が低迷する傾向にあります。自家用車を保有される、或いは保有されない理由は、各ご家庭それぞれではありますが、凡その傾向としては、「駅が近ければ、普段は電車移動の方が合理的だ」ということだと思いますし、ターミナル駅からも一駅ということになれば、「お仕事等で遅くなったらタクシーで」ということで尚更自家用車は要らない、ということだと思います。

今回のマンションも数年前から駐車場の稼働率は低迷していました。

この稼働率で築24年まで駐車装置を維持し続けることは、通常であれば不経済な結果にもなりかねませんが、このマンションでは、絶妙な収支バランスを維持して来られました。

 

【絶妙な収支バランス】

収入面

上記の立地のマンション(駐車場)であることから、駐車場の使用料も3万円程度に設定されていました。1台あたり3万円の収入があれば、高額な部品の交換を除けば稼働率30%程度でも維持費をギリギリ賄うことができます。また、空き車室(区画)については、サブリースで副収入を得られていました。※このサブリースが、当工事センターがお付き合いをさせて頂くきっかけでした。

3万円の使用料+サブリース賃料で維持費を賄うことで、注意すべきは『高額な部品の交換のみ』ということになりました。

 

支出面

この管理組合さんは、『コストの抑制』という一貫した方針の下、大きく2つの施策に取り組まれました。

保守(メンテナンス)業者の切り替え

当センターとのお付き合いが始まった時点で既に保守(メンテナンス)業者は、メーカー系保守業者から独立系保守業者に代わっていました。これをもう一度代えることは、通常はあまり得策ではありません。しかしながら、この管理組合さんの切り替え方は「上手いなぁ」と思わせられるものでした(詳細はまたの機会に)。

最低限の部品交換

当センターが保守(メンテナンス)契約をお請けした時点で、とっくに交換時期を超過している部品がいくつもありました。故障した場合にはしばらく駐車場が使えなくなるレベルの部品はほとんど交換されていない一方で、故障した場合に大きな事故につながる部品はきちんと交換してありました。

ある日、駐車装置のスプロケット(歯車)の一つが破損し、交換が必要な事態となりました。この駐車装置には同様のスプロケットが合計10個設置されています。1つが壊れれば他の9個も早晩壊れますから、10個まとめて交換されることをお勧めしましたが、結果的に交換は2個(1セット)に留められました。これは単なる最低限の対症療法という意味合いではなく、各費用とのバランスで、3個(2組)以上の交換が必要であれば、平面する方が合理的だという判断でした。

 

【平面化決断の経緯】

恐れていたことが起こりました。2組目のスプロケット(歯車)が破損し、当面は駐車装置の使用ができなくはないものの、パレット昇降の度に近所迷惑になるレベルの異音が生じる上、いつかは滑落のリスクもあります。

「3個(2組)以上の交換が必要」な状況となったわけです。ありがちなのは、しぶしぶ2組目の交換をして、「あの時一緒に交換した方が多少なりとも安かったのになぁ」と後悔されるパターンですが、この管理組合さんは、不具合がある車室(区画)の車を他の車室に移動された上で、平面化の総会上程準備に移られました。

『高額な部品の交換』の基準はそれぞれだと思いますが、この駐車場にあっては2組目以降のスプロケット交換は“高額”に位置付けられていたようです。

 

【一貫した方針】

この管理組合さんには「コスト抑制」という一貫した方針がありました。もちろん『安全』が大前提であることは言うまでもありません。

『そんなことはうちの管理組合でも同じだよ!』という声が聞こえてきそうですが、これを貫くことは容易ではありません。

コスト抑制の議論は、概して“総論賛成・各論反対”となりがちです。

コストを削減すれば、修繕積立金に余裕が出ますからこれに反対される方は先ずいらっしゃらないと思います。まさに“総論賛成”の状態です。

ところが、コストを削減する為に、、、と議論が各論に進むと賛成される方と反対される方に分かれてきます。コスト削減をして、修繕積立金が潤うという間接的なメリットと直接的なデメリットを冷静に比較したり、自己犠牲の精神を発揮したりすることは実際には簡単なことではありませんから、“各論反対”となることは当然のことかもしれません。

 

この管理組合さんに当て嵌めれば、

コスト削減の為に、故障の度に利用車室(区画)の変更を強いられる管理組合員の方は面倒でしょうし、たまたまご自身が理事長であった年に、駐車場の平面化と言う大きな議案を総会上程しなければならない方の精神的なご負担も軽いものではなかったと思います(ご自身が理事長の時には大きな議案は避けたいとお案が得るのが人情です)。

しかしながらこの管理組合さんは、少なくとも駐車場の事に関しては、総論賛成・各論賛成でありました(もちろん、各論賛成は、各論甘受なのかもしれません)。

一貫した方針の基づく『総論賛成・各論賛成』の体制が無ければ、駐車場の収支バランスが崩れていたか、大きな事故が起こっていたかもしれません。

今回は、一貫した方針と絶妙なバランス感覚でロスを出すことなく駐車装置を維持された管理組合さんの、最も効果的なタイミングでの平面化工事でした。

【 施工前 】

 

【駐車装置撤去後】

【施工後】

地上部分

地下部分

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