全国駐車場工事センターにしばしば持ち込まれるご相談の一つに
『駐車装置の定期点検(メンテナンス)料金が高いので、安く抑えたい』というものがあります。
駐車場の契約台数が減り続け、使用料収入は減り、管理組合の会計は悪化の一途を辿っている。
『居住者にもっと車を買ってもらう施策』が思いつくのであれば最高なのですが、これはなかなか難しい(これが思い浮かぶ方は是非自動車ディーラーへのキャリアチェンジをお勧めします)。
契約台数=使用料収入の増加策がなければ、コスト削減策を考えるのがセオリーです。
コスト削減策を考えるときに最初に思い浮ぶのは、
最も身近な『定期点検(メンテナンス)契約』の見直しなのではないでしょうか?
『30台収容の単純昇降式駐車装置、
3か月に1度の定期点検で年間約50万円の点検料金を支払っている。高い!
基準や根拠は特にないけれど、なんとなく高い!!』
ということで、『一般的に取られる行動』は2つです。
① 管理会社に『もっと安いメンテナンス会社を探してきて』と丸投げする
②『機械式駐車場』『メンテンス費用』『安い』でネットを検索する
⇒検索上位の数社に見積りを頼んでみる
この行動自体は否定しませんし、この他に採るべき行動も特に思い浮かびません。
但し、この行動に移る前に、やって頂きたいことがあります。
それは、長期修繕計画の確認です。
長期修繕計画の『機械式駐車場』の項目をよくご確認頂くと、駐車装置の修繕(≒部品交換)に、
大きな金額の費用がかかることがお分かり頂けると思います。
また、第25期から第30期あたりに『駐車装置のリニューアル(費用の支出)』が計画されている
ことにもお気づきになると思います。
修繕費用とリニューアルの費用と比較して頂くと、『年間50万円のメンテナンス費用』が
とても小さい金額に思えてくると思います。
長期修繕計画を参考に、駐車装置のライフサイクル1回転の費用をまとめてみると
おおよそ以下の比率になります(※)。
定期点検費用 : 修繕(部品交換)費用 : リニューアル費用
1 6 3
※駐車装置により異なりますので、個別の長期修繕計画をご確認ください。
このことをご確認頂かないまま『一般的に取られる行動』に移られた場合
頑張って定期点検費用の値下げに成功されても、結果としてコスト削減につながらない可能性が
多分にあります。
『一般的に取られる行動』の“一般的なその後”
メンテ業者A : 当社なら、定期点検費用を〇割は安くできます!
オーナー : 点検費用が安くても、修繕が高くなるんじゃ困るよ?
メンテ業者A : 当社は、ほとんどのメーカーの装置の対応実績があり
部品の仕入れにも支障がありませんので、修繕が高く
なることもありません!ご安心ください!!
そして、一般オーナーであれば、この話を信用するか否かで悩まれ、管理組合であれば、
この話を信用する人たちと信用しない人たちで結論が出ない議論を戦わせることになります。
ではどうすべきなのか?
教科書的に言えば
『修繕も安く対応できるかどうかを予め確認しましょう』となりますが、
一般的な駐車場オーナーさんや管理組合さんにとって、これはなかなか難しい課題ですし、
検証することも簡単ではありません。
結局契約した後は、その業者さんに全てを委ねることになり、多分“頑張った割に”大した効果は
見込めません。
上手くいかない原因は?
① 全体コストのうち10%に過ぎない定期点検料金の値下げを主に検討している。
⇒ 仮に半額にできたとしても、コスト削減効果は5%に留まります。
(業者からすれば、1回の修繕で回収できそうな金額です)
② 修繕(部品交換)が安くできるかどうかという裏付けが取れない課題に取り組んでいる。
⇒ 結果の検証も難しく、あとになって“高くついた”と気づいても、もうどうすることも
できません。
◎メンテナンス業者の選びかた
駐車装置に係るコストは、空き車室の数だけ収容台数を削減するのがコスト削減への近道です。
収容台数の削減の方法は主に2つあります。
① 駐車装置の(一部)平面化
② 少台数の装置へのリニューアル
つまり、メンテナンス業者は、
『駐車装置の平面化やリニューアルに積極的かどうか』
の基準で見て頂くことをお勧めします。
積極的かどうかの見方は簡単で、実績の有無と具体的に見積書を提出できるかどうかです。
このコラムは、『定期点検(メンテナンス)契約の見直し』で始まったにも拘らず、
『平面化等の見積りを取ってみましょう』というよくわからない結論になっています。
しかしながら、『駐車装置に係るコスト削減』という真の目的に立ち返ると、
『点検料金(の安さ)』と『修繕(部品交換)を“安くしてくれそう”かどうか』で
メンテナンス業者を見直すよりも、他のトータルコスト削減に積極的かどうかで
ご判断いただく方が、大きな効果が期待できることをご理解頂ければ幸いです。