【施工概要】
工 種 : 平面化(鋼製平面)
施 主 : マンション管理組合
物件種別: 分譲マンション附置駐車場
築年数 : 23年
所 在 : 大阪府
施工前 : 横行昇降(地上2段地下1段)式 収容台数=8台
施工後 : 鋼製平面 収容台数=3台
◎きっかけは駐車場需要の減退(空き問題)
マンション竣工当初は、満車に近い状態であったもの、近年マンション居住者の駐車場需要が減退し、駐車装置の維持費用が相対的に重くなってきたことから、収支改善策の検討を開始されました。
まず初めに着手されたのは、メンテナンス会社のリプレイスでした。
◎メンテナンス会社リプレイスの効果
メンテナンス会社を、従前のメーカー系業者から独立系業者に替えたことで、3ヶ月に1度の点検費用は概ね半分になりました。これはこれでコスト削減効果があるわけですが、如何せん定期点検費用は、駐車装置に係るコストの内の10%程度に過ぎません。
したがって、全体の10パーセントが半分になっても、コスト削減効果は5%に留まります。
独立系メンテナンス業者へのリプレイスについては、管理組合内で賛否両論あり、喧々諤々の議論で苦労された割に効果は大きくは無かった、という意見も管理組合員さんの中からは聞こえてきました。
ちなみに、定期点検に関する費用は、3ヶ月に1回、1台あたりの点検費用が3,500円から1,800円に下がりました。機械式駐車場が13台ありましたから、毎月約1万円のコスト削減効果、ということになります
☆計算式
(3,500円-1,800円)/3ヶ月×15台≒10,000円/月
※ メンテナンス業者変更の効果は、定期点検費用の削減だけではなく部品交換/修繕にも及びますが、この部分の効果は非常に検証が難しいところです。
◎次なる一手としての一部平面化
1万円/月のコスト削減が駐車場収支に与える効果はそれほど大きなものだとは言えません。次に上がってきた議論が『空いている=使っていない駐車装置を維持していかなければならないのか?』という至極当然な疑問です。
その疑問に対する解答としての平面化の検討が始まりました。
◎平面化のコスト削減効果
平面化のコスト削減効果の検討は比較的簡単です。
・駐車装置に係るコスト
定期点検費用 ・・・ 定期点検料金 × 検討期間
部品交換/修繕費用 ・・・ 修繕計画(書)から算出
リニューアル費用 ・・・ 修繕計画書から算出、または120万円/台で試算
・鋼製平面に係る費用
平面化工事費用 ・・・ 施工業者の見積書による
補修費用 ・・・ 5万円/台・10年 ⇒ 25年で15万円/台
今回の物件(平面化対象)では、概ね以下の計算となります。
・駐車装置に係るコスト(向こう25年)
定期点検費用 ・・・ 1,728,000円
部品交換/修繕 ・・・ 6,400,000円
リニューアル費用 ・・・ 9,600,000円 合計17,728,000円
・鋼製平面に係るコスト(向こう25年)
平面化工事費用 ・・・ 4,500,000円
補修費用 ・・・ 450,000円 合計4,950,000円
・削減コスト
17,728,000円 - 4,950,000円 = 12,778,000円
もちろんこれは比較的大雑把計算です。
誤差のない厳密な比較検討をするには、駐車装置の維持費に不確定要素が多過ぎて難しい、というより不可能です。時々、コスト削減効果が100万円なのか101万円なのか、というような厳密な比較検討に拘泥した結果、削減できたであろう100万円か101万円のコストを削減できずに終わる場合があります。「管理組合の予算であるからいい加減な検討は許されない!」仰ることはわかりますが、、、。
※平面化を検討してはじめて気付かれること
平面化を検討し始めると、管理組合の皆さんは(場合によっては管理会社の担当者さんも)
いろんなことに気付かれます。主なものは以下2点です。
① 部品交換/修繕
初めに気付かれるのは、部品交換/修繕費用の大きさです。「定期点検料金が高い!」等と仰っていたことが恥ずかしくなるほど、部品交換には定期点検の何倍もの費用が予算計上されています。
② リニューアル
管理組合さんの駐車場に関する議論は、「駐車装置は永遠に使用できる」前提になりがちですが、駐車装置は耐用年数が25年から30年に設定されており、長期修繕計画上は、通常第25期~30期にリニューアル予算が計上されています。
これらは「初めから長期修繕計画書に書いてあるでしょう」というものですが、長期修繕計画書を熟読して常に認識しておられる方は現実的には少ないようです。部品交換/修繕やリニューアルにどれほどの費用がかかるのか(再)認識された瞬間から当初“高い!”と思われた平面化工事の見積(書)が、高いとは思えなくなります。
この管理組合さんでは、平面化工事の経済合理性の説明がスムーズに受け入れられ、また、工法(鋼製平面か埋め戻しか)の検討もこちらの説明をご理解頂き、半年程度で発注となりました。
◎工事風景(工程)
①施工前 ・・・ 横行昇降(地上2段地下1段)式駐車装置
②解体工 ・・・ 旧駐車装置を解体・撤去する工程です。
錆びついたボルトを緩めたり、溶断したり、重さ500kgのパレットを搬出したり、、、解体期間中は、相当な騒音が発生します。この間は居住者の皆様、物件によってはご近所の皆様のご理解とご協力が不可欠です。
③解体完了 ・・・ 駐車装置の解体・撤去が完了し、ピットが空になった状態です。
④資材搬入 ・・・ 柱や梁、床材を搬入します。
⑤柱の据付 ・・・ ピットに打設したアンカーに柱を固定していきます。
⑥梁の据付 ・・・ アンカーと柱に梁を固定していきます。
⑦床材敷設 ・・・ 梁の上に床材を敷き詰めていきます。
⑧完 工 ・・・ 敷設した床材周辺の塞ぎ工とライン、タイヤ止めを設置して完工です。
ピット内は空洞です。
※画像は全てイメージです。