コラム
2020/10/07
平面化・リニューアルとアスファルト

平面化する場合のいわゆる鋼製平面の床材はもとより、駐車装置も今はほとんどがいわゆる亜鉛メッキになり、塗装に比べて防錆性は高くなり、簡単に言えば長持ちするようになりました。

特に駐車装置の鉄部塗装、パレット塗装を経験された管理組合の方々は、メッキ(塗装)の耐用年数に敏感な方が多く、それに関する質問を良く頂きます。

塗装よりも亜鉛メッキの方が強いことは間違いないのですが、何年持つのかと聞かれると、明確には答えづらい、と言うのが正直なところです。

一方で、亜鉛めっきの耐用年数を確実に短くするものが2つあります。

一つは、バッテリー液です。

亜鉛(メッキ)は酸に弱い性質があります。駐車場にある酸と言えば、バッテリー液です。バッテリー液を補充している時に、誤って液をパレットの上に溢してしまったら、メッキを痛めることになります。中学校の理科の時間に習った塩酸と亜鉛の実験、まさにあれです。

とはいえ、最近ではメンテナンスフリーのバッテリーも多く、液を補充する光景はあまり見られなくなりましたので、現実的には心配はいらないのかもしれません。

もう一つは、硬い突起物です。

駐車場にある硬い突起物、、、砂利、石です。

駐車装置が設置されている駐車場のほとんどは、車路が舗装されていますから、砂利なんてないはずなのですが、、、これがあるのです。

アスファルトの劣化により骨材(砂利)が剥離し、車路面がザラザラしていることが良くあります。こうなると、自転車や歩行者の転倒事故のリスクが高まり非常に危険です。また、車が通るたびに、タイヤに砂利が付着し、パレットや床材に上がりますから、駐車装置のパレットや鋼製平面の床材を痛めることになります。

塗装より強い亜鉛メッキでも、石の上から車の重み(1t~2t程度)をかけて毎日毎日擦られれば、さすがに劣化は早まります。

車路は入庫するための切り返しスペースでもありますから、いわゆる据え切り(すえぎり)で、アスファルトを傷め、特に開粒度(透水性)アスファルトで舗装された車路は、この据え切りに弱く、骨材が剥離しがちです。透水性でも樹脂を用いたものもあり、開粒度アスファルトよりは強いとされていますが、やはり密粒度アスファルトに比べると弱い印象を持ちます。

雨水等の排水計画の関係上、車路に開粒度アスファルトを用いられている駐車場は少なくありません。機械式駐車場の平面化やリニューアルを検討される場合は、概して竣工から10年以上が経過しており、車路のアスファルトが劣化している駐車場が少なくありません。

骨材が剥離している状態は見栄えが悪い上、水溜りもできやすくなり(※)、何より自転車や歩行者の転倒事故も引き起こしかねないことから、看過できません。※透水性アスファルトとはいえ、砂やほこりによる目詰まりで、透水性とは名ばかりの状態になっているものがすくなくありません。

そのような場合には、アスファルトの補修(再舗装)を提案するようにしています。

埋め戻しにより平面化する場合は、同じアスファルト舗装工事ですから規模の論理で車路の再舗装も若干割安になる場合があります。

鋼製平面の場合には施工後の鋼板(床材)を、リニューアルの場合はパレットを長持ちさせることにつながります。

但し、開粒度(透水性)アスファルトから密粒度(非透水性)アスファルトへの再舗装は費用が嵩む場合があります。その原因は、排水路の確保です。

開粒度アスファルトが雨水を骨材の隙間から地中に流す(染み込ませる)ことで排水しますが、密粒度アスファルトは雨水を染み込ませないために、舗装面に傾斜を付けたり、排水路(溝)を設えたりする必要がありますから、その分費用が嵩みます。

費用が嵩むとなると話は簡単ではなくなりますので慎重な検討が必要ですが、機械式駐車場の平面化(鋼製平面)やリニューアルと車路のアスファルトの再舗装は同時に実施される方が長い目で見れば経済的な場合が多く、新しい駐車装置のパレットや鋼製平面の床材が『何年持つのだろう』という不安はかなりの割合で軽減されると思います。

余談ですが、、、

車路の舗装を直すときには、埋設物の確認をお願いしたいと思います。

以前、平面化(鋼製平面)工事と併せて車路の舗装を検討されていた管理組合さんがありました。まもなく総会で採決しようというタイミングでその管理組合さんは、駐車場問題が解決した後の次の課題として、給水設備の改修(いわゆる直結工事)を検討されることが判りました。

直結工事となれば、せっかく駐車場の平面化工事の一環で再舗装した車路に、カッターを入れ、アスファルトを一部撤去し、工事後再々舗装をすることになります。

そうなると費用面でも無駄が生じる上に、見た目にも良いとは言えなくなります。

理事長さんと修繕委員の皆さんで再検討され、最終的には ①駐車場の平面化工事 ⇒ ②給水設備改修工事 ⇒③車路舗装工事、という流れで落ち着きました。

当センターとしては“良かれと思って”車路舗装までをお勧めしました。一方で、給水設備工事業者さんは、アスファルトの一部撤去と再舗装は当然のことと考えられておりました。双方全く悪意は無かったのですが、結果的に管理組合さんに損をさせてしまうところでした。

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