コラム
2020/09/19
勉強会レポート:リスク無き平面化

今週、大手マンション管理会社大阪支店さんの勉強会にお邪魔させて頂きました。

マンション管理の実務にあたられるフロントマネージャー20名以上の方々がご参加
下さり、拙い話にお付き合い頂きました。

『リスク無き平面化』というテーマでお話させて頂いた今回の勉強会の内容を、簡単に
ご紹介致します。

全国駐車場工事センターへ頂くご相談やお問い合わせの約半数は管理組合関係の方(理
事、修繕委員他)から直接頂くようになりましたが、マンション管理組合の皆さんにと
って、最も身近な相談相手はやはりマンション管理会社のフロントさんだと思います。

 

『機械式駐車場は“金食い虫だ”!』などというフレーズを頻繁に目にするこのご時世です
から、駐車場、特に機械式駐車場に係る課題はほとんどのマンション管理組合さんが抱え
られていると思います。したがって、最も身近な相談相手である管理会社のフロントマネ
ージャーさんには、駐車場に係る多くの相談が持ち掛けられると思います。また、管理組合
の潜在的な課題としてフロントさんが主体的に解決策の提案をされる場合もあると思います。

その際に、管理組合さんに想定外のリスクを負わせる結果にならないように、そして管理
会社さんご自身が管理組合さんとの関係で“変な”リスクや責任を負わないように気を付けて
頂きたいという思いがあります。

誤った認識や前提で、またはリスクを認識しないまま管理組合(主に理事会)の議論を進め、
気付いた時には退くに退けないところまできてしまっていたり、中には、誤りやリスクに気
付いたのは、工事が終わった後だったり、という事例にしばしば遭遇します。街を歩いていた
り、相談を受けてマンションにお邪魔したりする中で、『よくここで埋め戻したなぁ』と他人
事ながら背筋が凍る思いをすることも間々ありますが、そのようなマンションについて、担当
の方やご相談を頂いた方に『よくここで埋め戻しを決断されましたね』というと、『何が?』
という反応が返ってくることが殆どです。

駐車場の稼働率が低下してきたときに検討される施策の一つが、機械式駐車場の(一部)平面化
です。最近は、平面化を検討される管理組合さんも増えていますが、検討の入り口でご確認頂き
たいポイントは2つです。

1.駐車場の附置義務の確認

2.工法の選択(地盤リスク)

この2つだけご注意・ご確認頂ければ、管理組合さんが想定外のリスクを負われたり、管理会社
さんが無駄なリスクを負われたりすることも避けられると思います。

1.駐車場附置義務の確認

これは、電話1本(~3本)で確認ができる作業ですが、これを怠ると、後々、場合によっては
平面化議案を決議する総会で大どんでん返しを食らう可能性があります。もちろん、確認せず
とも“結果オーライ”となる場合もあります。
附置義務確認を怠った場合の主なトラブルは以下2パターンです。

イ)附置義務があるマンションで、附置義務がない前提で議論

時間や労力をかけて平面化を検討し、ようやく漕ぎ着けた総会で「附置義務は
大丈夫ですか?」という質問で、すべての苦労が水の泡ということになるかも
しれません。

ロ)附置義務がないマンションで、附置義務がある前提で議論

この誤った前提の議論の結果は、「平面化できる駐車場で平面化を諦める」
=駐車装置の維持費を負担する、ということになります。

※附置義務に係る詳しい内容は、また別の機会に。

 

2.工法の選択(地盤リスク)

平面化と言っても、工法がいくつかあります。工法の選択を、施工費の多寡だけで決める
ことができれば話は簡単なのですが、それ以外に外すことができない検討項目がいくつか
あります。その代表的なものが『地盤リスク』です。

平面化を検討されるときに、最初に思い浮かべられる工法は「埋め戻し」だと思いますが、
これには地盤リスクが付きまといます。

埋め戻しは、従前の駐車装置(+自動車)の数倍の負荷(荷重)を地盤にかけることに
なりますので、地盤が弱い地域では、陥没やピット傾斜等のリスクが大きくなります。
一般に埋め戻しは、他の工法に比べて安価であることから、一番の候補になりがちですが、
検討の過程では、地盤リスクがあることをご認識頂いた上でご検討頂き、場合によっては
施工費用が高くついても他の工法を検討頂かなければなりません。

管理組合の皆さんはもちろん、フロントさんでも埋め戻し以外の工法が念頭にない、とい
う方が少なくありません。

中には、議論が進んでしまって(理事会の皆さんもやる気になられて)から地盤リスクを
認識され、今更「実は地盤リスクというものがありまして、、、」とは言いだしづらいと
悩まれる方も時々おられます。

関東に比べて、関西は地盤が弱い地域が多い(広い)ため、今回の勉強会のテーマとして
取り上げさせて頂きました。

「附置義務」と「工法の選択」ここだけご注意頂ければ、リスクを抱えてあとで苦労するような
自体は避けることができ、当初の目的『平面化によるコスト削減』にまっすぐ向かって頂けると
思います。

【番外編】今回お邪魔した管理会社とは全く関係ない話です。

時々お会いする“入り口を間違えたことに気づいてしまったフロントさん”の行動は、以下3つに
分かれます。

A 誤りを認めて、管理組合にその旨説明する(⇒代替策を検討する)

B 気付かなかったことにする

C 誤りではない、という謂わば責任逃れの屁理屈を考え出し、これに加担する業者を探す

もし、このような状況に陥られている方がおられましたら、ぜひAの行動を採って頂き、代替策
の検討で、当センターをご利用頂きたいと思います。

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