施工事例
2020/12/23
コラム:駐車場と消火設備

駐車場に関わる仕事をしている者の被害妄想の一つかもしれませんが、駐車場がメディアで取り上げられるときは、あまり良いニュース/記事でないことが多いと思いように感じます。

駐車場はあくまでも車を停める為だけのスペース/設備ですから、良いニュースになりようがない為に、取り上げられる場合はほとんど事故や事件のニュース、という事なのだと思います。

最近では「機械式駐車場は金食い虫だ!」という類の記事も時々見られますが、いずれにしても良い話ではありません。

 

今回も不幸なニュースで取り上げられました。

愛知県名古屋市のホテルの駐車場で消火設備(二酸化炭素ガス)から意図せず二酸化炭素ガスが噴射され、現場で亡くなられた方がおられるというニュースが報じられています。

当センターはこの事故についてメディアで報じられている以上の情報は何も持ち合わせておりませんので、この事故については何もコメントすることができませんが、とても他人事とは思えない事故ですので、駐車場と消火設備について当センターがお客様に呼び掛けていること、各工事のアレンジにあたって注意していること等をご紹介したいと思います。

 

◎自動車≒ガソリンタンク

駐車場は車を駐車するスペース/設備です。車があるということは、当然ながらタンク内のガソリン等の燃料も一緒に保管されていることになります。

駐車されている各車両のタンクに残っている残量にもよりますが、仮に1台30Ⅼとして、30台収容の駐車場だとすると、駐車場内に900Ⅼのガソリン等が保管されていても不思議ではありません。900Ⅼのガソリンが燃えたときにインパクトがどの程度のものか想像もつきませんが、機種によっては80台以上の収容能力に対して乗り込み口は1箇所という駐車装置も少なくありませんから、その中で火災発生した場合、消火作業が簡単ではないことは容易に想像ができると思います。

 

◎屋内の駐車場と消火設備は不可分の関係

駐車場の位置(屋内にあるのか屋外にあるのか等)、駐車装置の種類(エレベーター式/垂直循環式/地下循環式/単純昇降式/横行昇降式等)、によっても消火設備の種類は異なりますが、駐車場には何かしらの消火設備が設置されています。

今回の名古屋市のホテルには「二酸化炭素ガス」を用いた消火設備であったようですが、同じような設備でもガスが「窒素ガス」のものや「ハロンガス」のものもあります。また、数として一番多いのは「泡消火式」のものではないでしょうか。

ちなみに、泡消火式では、数か月前にも誤作動か誤操作かは判りませんが、前面道路まで泡だらけになった事故がありました。泡だらけになった道路を見て喜んでいるお子さんの映像をテレビニュースで見ましたが、私は肝を冷やしたのを覚えています。

 

◎適正時期に、適正価格で確実に実施!

消火設備は適切に作動し、また適切に操作されることが不可欠で、作動すべき時(火災の時)に作動しなければ火災の被害は大きくなりますし、作動すべきでないときに作動するとガスの種類等によっては人命にも関わる事故となる場合もあります。

誤操作や誤作動による事故、特に設備自体の経年劣化による誤作動が懸念されるところで、法令等でもルールが定められています。

例えば、

二酸化炭素ガスを用いた設備は20年で、ハロンガスのものであれば25年でバルブ交換

が求められています。

但し、これらのバルブ交換に係る費用は安いものではありません。しかも、法令等で求められているバルブ交換等に乗じて、本来不要な商品・サービスまで“あたかも消防法で定められているかのような説明”で売ろうとする業者があったり、メーカーとオーナーさんお間に販売店や代理店等が何社も介在したことで値段が上がったりすることで、さらに高い印象を与えられる場合があります。

※1,100万円が800万円

実際に、当センターに相談を頂いた事案で、当初1,100万円であったバルブ交換等が、発注先を代えただけで800万円に収まったことがありました。これは、介在する業者の数が多く、中間マージンが何重にも発生していたパターンです。

※1,000万円が180万!?

中には、当初業者さんから必要だと言われていた商品・作業の見積りが1,000万円程度であったものの、“本当に必要なもの”に絞り込んだ結果180万円程度に収まったこともありましたが、これはまさしく不要なものまで売りつけられそうになったパターンです。

理由の如何を問わずあまりにも費用が高くなり過ぎた結果、本当に必要なところまで先送りにされたり、取りやめられたりすることが、一番危険なことです。

 

◎駐車装置の工事は、消火設備の手当てもお忘れなく!!

ところで、機械式駐車場にあっては、駐車装置に係る工事の際にも慎重に進めなければなりません。

例えば、泡消火式の消火設備で、噴射ヘッド(泡の吹き出し口)が、駐車装置の躯体に固定されていることがよくあります。これを平面化しようとする場合には、計画段階で残す噴射ヘッドと撤去する噴射ヘッドを選定し(状況によっては当局とも協議し)、配管経路を検討し、駐車装置解体前には工事中にご噴射しないように大元のバルブを閉じ、駐車装置と切り離し、工事が終われば再開する(工事によりプロセスが異なる場合があります)ことになります。

 

◎不作動も事故、誤作動も事故

消火設備は、必要な時(火災の時)に十分に作動しないこと、不要な時に誤作動すること、両方を避けなければなりません。

その為に、法令等を遵守し、適正価格で適正時期にメンテナンス(バルブ交換等)を行うこと、そして駐車場との関係では、駐車装置の工事には多くの場合消火装置が関係することを理解し、適切な処置が不可欠です。

 

 

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