コラム
2022/05/26
コラム:部品交換/修繕と平面化の関係

『5年後か10年後に平面化するかもしれませんので、施工の見積書を手配して頂けませんか』

こんなご依頼を頂きました。

 

なぜ5年後か10年後?(なぜ今じゃないの?)

 

直接のご依頼主はマンション管理会社の担当者さんでしたが、曰く『(管理組合の)理事会が、見積りが欲しいと仰っている』とのことでした。

気になって、諸々ヒアリングしてみた結果、その管理組合さん(駐車場)の状況が見えてきました。

①築15年、全25戸の分譲マンション

②駐車場は、単純昇降(地上1段地下2段)式 15台収容

③駐車場の契約台数は、9台(6台の空き)

④メンテナンス業者さんから提案された約300万円分の部品交換が定期総会で決議し、発注したばかり※当初は400万円分の部品交換の提案を受けたが、メンテナンス会社さんと交渉して“今すぐ必要な”300万円分にした

⑤新理事会から、「あと5年か10年もすれば、さらに契約台数が減るだろうから、その時は平面化できないのか?」という質問があった。加えて、『平面化っていくら“くらい”かかるんですか?』という質問を受けた

 

○冒頭の『なぜ5年後か10年後?』の答えは、

④新理事会から「あと5年か10年もすれば、、、」ではありません。

その答えは、

部品交換を発注したばかりだから、です。

 

またこの“残念な”パターンか、、、。

 

なにが残念なのか?

 

駐車装置の収容台数15台に対して、空きが6台もある状態で、“一部平面化を検討することなく”部品交換/修繕を進められていることが残念でなりません。

 

◎どうすれば良かったのか?

400万円分の部品交換を検討される際に、部品交換の見積書長期修繕計画書、そして一部平面化の見積書を並べて検討されるべきでした。

鋼製平面の場合には、装置毎(回路毎)に平面化が可能(例外はあり)ですから、6台空きの状態であれば、下図の通り9台分の機械式駐車場を平面化する(下図)ことが可能です。

定期点検も、部品交換も、将来のリニューアルも、かかる費用は概ね収容台数に比例します。

つまり、15台収容の機械式駐車場の内、9台を解体・撤去、平面化することで、定期点検の費用も、部品交換の費用も、将来のリニューアルの費用もおおよそ15分の6、つまり60%削減(スケールメリットを勘案しても半額程度に)できることになります。

今回の管理組合さんにあてはめると、300万円の部品交換/修繕が、9台を平面化することで、概ね150万円で済むことになります。

もちろん平面化するにも費用がかかります。同規模・類似の事例(9台収容の機械式駐車場を3台の平面駐車場に)では、平面化の施工費用が400万円程度でした。

 

今部品交換をすれば300万円で済むところを、一部平面化して残りの部品交換をした場合は550万円(6台分の部品交換=150万円+平面化工事=400万円)となります。

『250万円も負担が重くなるじゃないか!』とお叱りを受けそうですが、確かに今のことだけを考えれば仰る通りです。

しかしながら、あと10年もすれば、駐車装置が耐用年数を経過し、リニューアルの検討をしなければなりません。

最近の類似事例では、リニューアル費用は、120万円/台程度でしたから、15台では約1,800万円の話になります。今、9台を平面化しておけば、スケールメリットを差し引いて150万円/台で計算しても、900万円で済みます。

今、250万円余計に支出して15台の内9台を平面化(平面化後3台)することで、10年後には900万円程のコスト削減ができます。

この先10年の間には、まず間違いなく部品交換/修繕が必要になりますから、平面化によるコスト削減効果はさらに大きなものとなります。

      ・15台分の定期点検費       >    ・6台分の定期点検費

      ・15台分の部品交換/修繕費      >    ・6台分の部品交換/修繕費

      ・15台分のリニューアル費     >    ・9台⇒3台の平面化工事費

部品交換を発注した後になって、それを覆すような提案をすることは、管理会社の担当者さんにとっては簡単なことではありません。だからこそ、機械式駐車場に空きがあれば、

・できれば ・・・ 定期点検で、各部品の経年劣化が指摘されはじめたら

・遅くとも ・・・ メンテナンス業者さんから部品交換/修繕の見積書が提出されたら

・最悪でも ・・・ 部品交換/修繕を総会で決議する前に、

機械式駐車場の(一部)平面化をご検討頂きたい思います。

 

ちなみに、冒頭の担当者さんには、現時点での平面化の御見積書をお渡ししましたが、理事会に諮ることはできたでしょうか?

理事のどなたかが「この金額で、しかも9台分だけ平面化できるなら、部品交換するより、、、」というご指摘を受けられてはいないでしょうか?

 

※関連事例

当駐車場工事センターから平面化を提案したものの、施工には至らないままお話が頓挫する場合もあります。一度平面化のお話が頓挫した管理組合さん(管理会社さん)から、

『至急平面化の見積りを手配してもらえませんか?』  とか

『3年前と同じ値段で平面化工事はできますか?』  というようなご依頼が度々あります。

そのほとんど(すべてと言っても良い)が、ついに駐車装置で故障が発生したり、先送りしてきた部品交換/修繕が待ったなしの状態になったりした(メンテナンス業者さんから『部品交換無にこれ以上責任は持てません』と言われた)パターンです。

こういう時間的余裕がない状況で機械式駐車場の平面化の合意形成を図ることは、理事の皆さんはもとより、管理会社の担当者さんにとっても大きなストレスを伴います。

そうならないように、『定期点検で、各部品の経年劣化が指摘されはじめたら』部品交換/修繕と併行して、平面化をご検討されることをお勧め致します。

 

事例集一覧