平面化、埋め戻し、埋め立て、舗装、鋼製平面、鋼板平面、暫定平面、、、いろいろな呼び方がありますが、機械式駐車場を平面駐車場にすることの総称が『平面化』、埋め戻し、埋め立て、鋼製平面、、、は、平面化の工法です。
平面化はどの工法でも駐車装置を解体・撤去するところまでは同じで、撤去した後の空っぽになったピット(コンクリートの基礎)を平面駐車場にする工法が、大きく2パターンあります。
・埋め戻し・・・“一般的には”ピットを砕石や砂利等で埋めて(埋め戻して)、
概ね平らにしたところをアスファルトやコンクリートで舗装する工法です。
埋め立て、と表現する方もおられますが、同じ工法です。
・鋼製平面・・・ピットに鉄骨で柱と梁を組んで、床材を敷き詰める工法です。
鋼板平面、暫定平面、デッキ工法等と呼ばれることがありますが、
基本的には同じ工法です。
当駐車場工事センターがアレンジする平面化工事では、鋼製平面の方が多いのですが、寄せられるご相談/依頼される見積りは、「埋め戻し」の方が圧倒的に多いです。理由は簡単、マンション管理組合さんはもちろん、マンション管理会社の担当の方でも鋼製平面自体をご存知でなく、平面化=埋め戻しという認識でいらっしゃる方が多いからです。
マンション管理会社の担当者さん等から『埋め戻し』の見積依頼を受けた際に、「埋め戻しで大丈夫なんですね?」とお尋ねすると、ほとんどの場合、質問の意図が伝わらず『???』となります。
埋め戻しは、鋼製平面に比べて条件が厳しく(多く)、リスクも大きい工法です。鋼製平面はほとんどの駐車場で施工が可能なのに対して、埋め戻しが採用可能な駐車場はそう多くはありません。
当駐車場工事センターでは、埋め戻しのご相談を受けた場合、最初に埋め戻し工法を採用する為の条件とリスクを説明しますが、それを初めて認識された担当者さんの行動は大きく2つに分かれます。
パターン① : 管理組合さんに埋め戻しの条件/リスクをあらためて説明する
あらためて説明すると、それまでの説明内容を否定する結果になることが少なくなく、場合によっては、「今までの説明は何だったんだ!」とお叱りを受けることがあるかもしれません。
それでも、埋め戻しに伴うリスクが現実のものとなっては関係する皆が不幸になりますから、あらためて埋め戻しの条件/リスク、場合によっては採用できない理由を説明し、鋼製平面の採用検討を促すことをお勧めします。もちろん、決められるのは施主となる管理組合さんですから、その意向によって(採用条件を無視して)埋め戻しの検討を進められることもあると思います。その場合には、リスクは管理組合さん負担であることを明確に説明した上で、そのリスクを最小限化する為に協力する、これがおススメする対応であり、あるべき姿であるようにも思います。
パターン② : 都合が良い回答をくれる業者を探す
埋め戻しに条件/リスクがあるなんて、管理組合さんに「今さら言えない」という理由が多いようですが、兎に角“黙って”埋め戻し工事を請けてくれる業者や見積りを出してくれる業者を探されるパターンです。条件をクリアする根拠やリスクを回避する能力がある業者さんが見つかればそれに越したことはありませんが、単に条件/リスクを認識していない業者さんや“リスクは当然管理組合負担”だとして説明を省いたり、“リスクは管理会社さんから説明された”ものとして敢えて言及しなかったりする業者さんに当たったら、これは管理組合さんにとっては悲劇です。
※他社さんから埋め戻しを断られた、という担当者さんから埋め戻しを請けてくれる業者の紹介を依頼される場合も時々あります。ほとんどの場合は、断られた理由を担当者さんが理解されていなかったり、自ら管理組合さんに埋め戻しを勧めた手前、引っ込みがつかなくなっていたりする場合がほとんどです。
◎二期工事
数年前に機械式駐車場の一部埋め戻されたものの、さらに契約台数が減ったことから残り部分の埋め戻しを検討される場合もあります。そのタイミングで、当駐車場工事センターから鋼製平面を勧められて初めて埋め戻しのリスクを認識され、対応に苦慮される担当者さんもおられます。
対応を誤れば「前回の埋め戻し工事は大丈夫だったのか?」という質問を受けることになり、「前回はリスクを認識していなかった」と回答するのか、「前回はリスクが無かったが、今回はリスクがある」と言ってみるか、あるいは黙って今回も埋め戻すのか、さらに苦しい選択を迫られます。
苦渋の選択だとはおもいますが、ここでも『あらためて条件/リスクを説明される」ことをお勧めします。
「前回も大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」という考えは、管理会社さんのお考えとしては少し楽観的に過ぎるような気がします。
〇提案内容の見極め方
機械式駐車場の平面化を検討される際に、条件/リスクの説明がないまま“埋め戻し”の提案を受けた場合には注意が必要です。
一方で、条件/リスクを予め確認された上で“埋め戻し可”との判断に基づいた埋め戻しの提案であれば、安心してその方と議論を進められることをお勧めします(そういう方は希少/貴重ですので)。
見極め方は簡単『うちの駐車場は埋め戻しても大丈夫なんですか?』と尋ねてみることです。場合によっては「附置義務は〇台ですので、埋め戻しても問題ありません」という違う観点から回答される場合もあると思いますが(附置義務は附置義務で重要です)、その場合はあらためて「鋼製平面でなくても大丈夫ですか?」と尋ねてみてください。
少なくともこのコラムをお読み頂いた方が納得される回答が得られることは少ないと思います。
『よくここで埋め戻したなぁ』
最近、街を歩いていて、平面化された駐車場を見かけることが増えてきました。近所のマンションの平面化された駐車場をご覧になって、『うちも同じように、、、』というご相談も増えてきました。機械式駐車場の平面化が浸透してきたなぁ、と少しうれしく思う反面、「よくここで埋め戻したなあ(リスキーだなぁ)」という駐車場、つまり当駐車場工事センターであれば埋め戻しを避ける駐車場も時々見かけます。
埋め戻した結果“今のところ何も起こっていない”という意味では当駐車場工事センターが慎重過ぎる、という事なのかもしれませんが、地盤のリスクは向こう何年、何十年という期間に亘って負い続けるリスクであり、ピットの不法投棄も、排水計画についても今のところ行政が気付いていないだけ、という可能性もあります。今のところ駐車場の平面化自体がまだまだメジャーだとは言い難いレベルですので今のところ特に気にされていないところ、排水計画の勝手な変更、ピット(基礎)の不法投棄等の非遵法事例が積み上がってくれば行政も看過できなくなるかもしれません。
もちろん当駐車場工事センターの見解だけが正しいとは限りませんので、様々な見解を尋ねてみられることは悪い事ではありませんし、むしろ広く意見は求められるべきだとも思います。その際には、当駐車場工事センターに限らず他社から説明を受けたリスクについてどのような手当てをするのか、或いはそのリスクが無いのであればその根拠の説明を受けることは必要だと考えます。
リスクの説明を受けないまま、発注する(させられる)ことは、避けて頂きたいところです。
ちなみに、このコラムに、管理会社さんのモラルや心構えを説く意図はありません。
管理組合さんにとって通常は最も身近な相談相手である管理会社さんから最初に出された提案は、管理組合さんの印象に深く残ります。もちろん、できないことやリスク潜んだ提案されるとは、夢にも思われないでしょう。
また、埋め戻しは、リスクに対する手当が不十分な見積り(金額)≒安価な見積りが提示されることが多いようですが、その安価な見積りが以降の判断基準になりがちです。
安価な施工費で(リスク無く)埋め戻しができるはず、という謂わば「埋め戻し“提案”の呪縛」により、以降の検討がスムーズに進まなくなったり、誤った(意図しない)方向に進んだりすることはしばしば見受けられます。
そうならないように、提案をする側(管理会社さん等)も提案を受ける側(管理会社さん)も、埋め戻しの採用条件/リスクについて、ご認識頂ければ幸いです。