各マンション管理組合さんや駐車場オーナーさんから当駐車場工事センターに頂く機械式駐車場平面化のご相談は増加の一途を辿っております。
平面化に関するご相談の1つに工法の選定があり、当駐車場工事センターでは、駐車場の特徴に合わせて工法をご提案しております。
工法の1つは“鋼製平面”と呼ばれるもので、駐車装置を撤去した後のピット(コンクリートの穴)に鉄骨で柱と梁を組み、床材を敷き詰める工法です。デッキ工法、鋼板平面、暫定平面等メーカーさんや施工業者さんによって呼び方は様々ですが、概ね同じものです。
もう1つは、“埋め戻し”と呼ばれるもので、“埋め立て”と仰る方もおられますが、駐車装置を撤去したピットを砂利や再生砕石、或いは土で埋めた上で、アスファルトやコンクリートで舗装する工法です。
埋め戻しに関するご相談は、鋼製平面のそれに比べて複雑なものが少なくありません。
埋め戻しに関するご相談には、大きく3つのパターンがあります。
①単純な見積依頼
埋め戻し工法の採用に問題が無ければ、難しい依頼ではありません。
②他社さんに断られた上で、埋め戻しをできる業者さんの紹介依頼
埋め戻し工法を採用する前提となっている場合が多いものの、他社さんが埋め戻しを断った理由が、非常に気になるところです。
③“どうしたら良いでしょうか?”
2つの“どうしたら良いでしょうか?”があります。
1つ目の“どうしたら、、、?
“マンション管理組合(理事長)さんや、駐車場オーナーさんからの“どうしたら、、、?”
鋼製平面という選択肢のご認識が無く、平面化=埋め戻しという前提で、検討を進めて行くにあたって具体的に“何をどうしたらよいのかわからない”、つまり、これから平面化を検討される管理組合さんや駐車場オーナーさん(或いは管理会社さんからの)“どうしたら、、、?”です。
これについては、一から説明/サポートさせて頂きますので、何の問題もありません。
2つ目の“どうしたら、、、?”
マンション管理会社等の担当者さんからの“どうしたら、、、?”
課題やリスクを認識されないまま埋め戻しをマンション管理組合さんや駐車場オーナーへ提案(推奨)した後のマンション管理会社担当者さんからの“どうしたら、、、?”で、これは少々厄介です。
提案した後引っ込みがつかなくなり責任を転嫁できる先を探しておられる担当者さんや中には「ただ誰かに”大丈夫ですよ“と言って欲しい」という切実な表情の方からの相談もありますが、残念ながら誰かが大丈夫だと言ってくれたところで、リスクや課題は解消しません。
こういう事態に陥られないように、埋め戻しを検討されている方々に、当駐車場工事センターでは、いくつかのチェック項目をお伝えしていますが、そのうちの代表的なものが①地盤(地耐力)と②排水計画です。
①地盤(地耐力)
埋め戻し工法を採用される場合、駐車装置を撤去した後のピットの中を埋め戻すのが一般的です(本来はピットまで撤去した上で埋め戻すべきだという考え方があり、ピットの中の埋め戻しについては別途議論があるところです)。どのような資材で埋め戻すかにもよりますが、再生砕石を用いた埋め戻しの場合、地盤には駐車装置の5倍から10倍の(ピットの深さ次第ではそれを超える)負荷がかかります。これに地盤が耐えられない場合、陥没やピット傾斜等の事故につながります。
『陥没したらまた埋め戻せばいいじゃないか』
『ピットが傾いたら、下がった方を埋めて、上がった方を削ればいいじゃないか』
と言われることがありますが、陥没やピット傾斜が対象のピット内だけで起こり周囲(特に建物や隣地)に影響がない、という事であればあとは補修費用だけの問題かもしれません。但し、その補修費用はあまり安価ではないと思われます。敢えてリスクを負って埋め戻しを進められる場合には、この補修費用の概算も事前に把握しておきたいところです。
②排水計画
屋外の機械式駐車場に降る雨水は、ピットの中にある釜場に集められそこから排水ポンプで下水道等に排出される、そしてその前提で排水計画が策定されマンション自体の開発許可が下りているのが一般的です。
埋め戻しの場合、通常排水ポンプは撤去されますから、駐車場に降った雨が行き場を失わないよう排水計画の変更が必要です。これを怠れば、駐車場に降った雨水が、建物の中や隣接する他の設備や施設に流入することになります。埋め戻し工事を行った後、雨が降るたびにピロティが水浸しになる、というようなお話もあります。また、敷地外(道路や隣地)へ流出させることは、それこそ大きな問題となりかねません。
埋め戻しによる排水計画の変更は、マンションの開発許可条件が変更されることから、変更の申請を必要とする場合もあります。駐車場の附置義務等に関しては敏感な方が、排水計画の変更については気になさらない方が多いように思いますが、どちらも同じ法令上の課題です。
残念ながら埋め戻しに関する課題やリスクを認識されていない管理会社の担当者さんや施工業者さんも少なくありません。また、埋め戻しは鋼製平面に比べて施工費も安価なことが多く、工法としてもイメージしやすいことから、“条件が整えば”採用されたいお気持ちは理解できます。一方で、条件が整うかどうか、つまりリスクや課題の確認をしないまま埋め戻しに突き進むこと、或いは突き進ませることは、新たな“どうしたら、、、?”を産むこととなり、関わられた皆さんを不幸にしかねません。
『埋め戻してしまえば、以後の維持費は一切かからず、排水ポンプの維持費まで不要になります』こんなバラ色のシナリオから議論を始めると、リスクや課題をどう解決するかよりも、大丈夫だと言ってくれる人(業者)探しに奔走されることとなりがちです。
ところで、冒頭2つ目の“どうしたら、、、?”に対して当駐車場工事センターからは、前言撤回となるとしても明確に説明されることをお勧めしております。埋め戻しのリスクや課題が管理組合員さんからの指摘で判明する、或いは施工後に何らかの形で発覚する(これが一番怖い)、というようなことになれば話はより重く、複雑になるからです。
できれば、1つ目の“どうしたら良いでしょうか?”でお役に立たせて頂きたいと思います。