コラム
2022/01/11
コラム:ギリギリ黒字は完全に赤字?

当センターに頂くご相談の多くは駐車場、特に機械式駐車場の“収”“支”改善に関するもので、また、そのほとんどは“支”の改善、つまりコスト削減策に関するご相談です。

これに対して当工事センターがご提案するソリューションは、平面化やリニューアル等思い切っ提案がほとんどです。

当工事センターにご相談を頂くマンション管理組合の理事の皆さんは、駐車場の収支状況に不安を覚えておられますので、当センターからご提案するとコスト削減策に対する明確な賛否は別として、一定の理解を頂ける場合がほとんどです。

ちなみに、
当工事センターのご提案に対し

『そこまで大袈裟な話ではないんです』

『とりあえず定期点検の料金を少し安くできれば収支は黒字になるので、、、』

というような否定的な反応、或いは戸惑いを示されることもありますが、そのような理事の皆さんは、駐車場収支の問題を根本的にご理解頂けていない場合が多いように思います。
中には、経験の乏しい管理会社の担当者さんが、初めての経験に戸惑いを覚えられる場合もあります。

閑話休題

その後管理組合向けの説明会や総会議案上程への話を進める中で、必ずと言って良いほど求められるのが、収支のシミュレーションです。
皆さんから求められるシミュレーションは、それ自体さほど難しいことではありません。

収支シミュレーション

収入は現状の実績かその実績に以降の予想を加味したものと以降のコスト予想(これは長計を参考にするのが一般的です)を累計していくだけです。

もっとも、長計が過度に楽観的なものであったり、悲観的であったりすると、シミュレーションは机上の空論となるわけですが。

ところが、このシミュレーションが皆さんの判断を誤らせることがしばしばあります。

このシミュレーションは、駐車場が独立会計化されている場合に機能するのです。

駐車装置に係るコスト(定期点検費や備品交換費、リニューアル費等)は、都心(市)部でも郊外でも大差はなく、どちらかと言えば郊外の方が高い傾向があります。したがって、都心(市)部の駐車場賃料/使用料相場が高い地域では、駐車場の収支で黒字を出すことは比較的簡単です。
郊外では契約率100%でも収支バランスが厳しい駐車場(管理組合)もある一方で、都心(市)部では、契約率が50%以下でも黒字になることは珍しくありません。

これで安心されている管理組合さん(理事の皆さん)は、駐車場問題のご理解が不十分だと言わざるを得ません。また、契約率50%で黒字でも、「50%は低い」と漠然とした問題意識をお持ちになる方々もおられますが、契約率にだけ反応される方々は採るべき施策を誤られがちです。

ほとんどの管理組合さんは、駐車場からの利益を(一般)管理費会計に組み入れられる前提で管理組合員の皆さんが負担される管理費の額が決まっています。そして、都心(市)部の駐車場賃料/使用料相場が高い地域では、(一般)管理費会計の駐車場収入への依存度は高い傾向があります。つまり、都心(市)部のマンションでは、相応に大きな使用料収入が得られることが期待され、その期待された利益を(一般)管理費会計に組み入れられる前提で、各管理組合員さんが負担される管理費の金額が決まっています。

別の角度から考えると、駐車場が高い地域で稼働率が下がると管理費値上げ、しかも大きな上げ幅となる可能性が高い、ということになります。

ちなみに、駐車場使用料を(一般)管理費会計に組み入れることの是非については、議論があるところです。標準管理規約(国交省)は、『第29条 駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料(以下「使用料」という。)は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。』とされています。

ミッション(検討課題)は?

まずお考え頂くのは、ミッション(検討課題)が

① 駐車場収支の黒字化

② (一般)管理費会計・修繕積立金会計の改善≒管理費・修繕積立金値上げの回避

これらのどちらでしょうか?、ということです。

駐車場が独立会計化されている管理組合さんでは、ミッションは①(で充分)ということになりますが、一般的な管理組合さんでは、ミッションは②になる場合が多く、①よりも難易度が高いミッションに取り組まれることになります。

(一般)管理費会計・修繕積立金会計改善の取り組み

「②(一般)管理費会計・修繕積立金会計の改善」に取り組まれる場合には、概ね以下のようなステップを踏むことになります。

イ)現管理費額の前提となる駐車場使用料収入を確認する

ロ)過去の駐車場使用料収入を確認する

ハ)イ)ロ)の差異(≒管理費の値上げ見込額)を確認する

ニ)ハ)の額を補う施策を検討する

当初『平面化やリニューアルなんて大袈裟な、、、』と仰っていた管理組合さん(理事の皆さん)の多くは、「イ)現管理費額の前提となる駐車場使用料収入を確認する」の時点で、平面化やリニューアル等の大胆な施策が”決して大袈裟なものではない”ことにお気づき頂けます。

できることからひとつずつが仇になることも、、、

このようなことを考えるまでもなく、「できることから一つずつ」取り組まれることも一つのアイディアだと思いますが、初めに取り組んだ施策が、次の施策への取り組みに支障を来す場合があります。また、当初取り組むべきミッションを取り違えた結果、気付いた時には手遅れ、というようなことも少なくありません。

もちろん(一般)管理費会計も修繕積立金会計も収支は駐車場だけで決まるわけではありませんが、駐車場が足を引っ張らないようにはしたいものです。

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