当駐車場工事センターに寄せられる駐車場平面化のご相談の多くは、駐車場の“一部”平面化のご相談です。
例えば3基(9台/基×3基=27台)設置されているうちの2基(9台/基×2基=18台)を撤去して平面化(6台)、1基9台の駐車装置は継続使用するというイメージです。
鋼製平面の場合、通常は駐車装置毎(≒一つの操作盤で操作で来る範囲毎)に平面化することができることから、埋め戻しによる平面化に比べてより小さい単位でフレキシブルに平面化の範囲を決めることができます。
◎どの駐車装置を平面化するのか
ここで持ち上がるのが、『どの部分(装置)を平面化し、その部分を継続使用するか』という課題です。駐車場の中に複数の駐車装置があるとすれば、それらの駐車装置が全く同じ条件であることはあまりありません。より正確に言えば、車室(区画)ごとに条件は異なります。異なる条件を把握して、明確な根拠を以って平面化対象装置を決定することは簡単なことではありません。
当駐車場工事センターにお話を頂く時点では、平面化対象装置が決まっていることもあれば、「どの装置を平面化対象とすれば良いのか」というご相談もあります。また、ご相談を頂いた時点で決まっていた平面化対象装置の変更をお勧めする場合もあります(この場合、検討に関わって来られた管理会社さんや施工業者さんが嫌な顔をされることが多いのがつらいところです)。
当駐車場工事センターにご相談を頂く時点で平面化対象装置が決まっている場合に、その根拠となっているのは主に以下3つです。
①契約状況
現時点での契約状況を判断基準とするパターンです。契約台数が少ない、すなわち人気が無い駐車装置が対象となります。
⇒ かなり大雑把な判断基準であるかのような印象も受けますが、契約台数が少ない(人気が無い)には、それなりの理由がありますから結果的に合理的な判断となることが少なくありません。
②収容サイズ制限(高さ制限、重量制限)
大型サイズの車両を入庫できる駐車装置(大型装置)を残して、小型サイズの車両しか入庫できない駐車装置(小型装置)を撤去・平面化するパターンです。
⇒ “大は小を兼ねる”の発想で、収容サイズ制限が異なる駐車装置がある場合には“大型装置を残す”というのは合理的だと思います。但し、小型装置の使用料は安価に設定されていることが多く、小型装置の平面化により大型装置に移動を求められる方の使用料金の設定は難しい議論になる場合が少なくありません。
③駐車装置の状態
検討時点でメンテナンス業者さんから部品交換を勧められている、つまり故障リスクが高い状態の駐車装置を対象とするパターンです。
⇒ 他の駐車装置が、今後も部品交換が不要だとは限りません。部品交換を勧められている駐車装置を平面化の対象とすること自体は否定できませんが、その場合、継続使用する駐車装置について、間を置かず部品交換を勧められる心積もりは必要です。
『契約状況』、『収容サイズ制限』、『駐車装置の状態』ほとんどの場合この3つうちのいずれかが根拠となって、平面化対象装置が決まっていることも事実ですが、それ以外にも考慮すべき点はいくつかあります。
当駐車場工事センターが平面化対象装置を検討する場合、あるいは対象の変更をお勧めする場合、その背景には『将来のことも考えましょう』という発想があることが多いように思います。
一例をご紹介します。
下図駐車場で、1号機から3号機の内いずれか1基を平面化する場合
この場合、小型装置である2号機の平面化を検討される場合が多いと思います。
しかしながら、場合によっては「2号機の平面化だけは避ける」ことをお勧めします。
ポイントは、車路幅です。
駐車装置は永遠に使えるものではなく、耐用年数は一般的に25年程度とされており、その時期が来ればリニューアルを(検討)されることになります。また、部品交換の進め具合では、より短い期間で駐車装置をリニューアルされる場合もあります。
リニューアルされる場合、認定基準に遵い乗り込み口にはゲートが設置されますので、ゲートの厚み分(約30cm)車路を狭小化することになります(※)。
向かい合わせに設置された駐車装置をリニューアルすると、両側から30cmずつ計60cm車路が狭小化することになります。
となれば、車路幅次第では、駐車装置の収容サイズ制限は大型を維持できたとしても、ゲートに干渉して事実上大型サイズの車両を入庫できない可能性もあります。
したがって、車路幅に十分な余裕がない場合には、1号機か3号機を平面化して駐車装置の向かい合わせ配置を解消する=2号機の平面化は避ける、ことをお勧めすることになります。
今回は、将来のリニューアルに伴うゲート設置による車路幅の狭小化についてご紹介しましたが、それ以外にも考慮すべきことはいくつもあります。それらについてはまたの機会にご紹介したいと思います。
※乗り込み口ゲートは、車路を圧迫しないようピット内に格納される『ダウンゲート(せり上がり式ゲート)』もありますが、ダウンゲートは排水管等との位置関係で採用できない場合があり、採用できる場合でも収容サイズの全長制限に影響する場合もあります。