コラム
2021/02/18
カーシェアは駐車場の収支改善に貢献するのか?

稼働率(空き)、駐車装置維持費、収容サイズ制限、使用料(賃料)設定等々駐車場に関する課題の解決にあたっている中で、マンション管理組合の皆さんに、アンケートをお願いすることがよくあります。

アンケートで皆さんにお尋ねする内容は課題によって様々ですが、自由記入欄を設けると必ずと言ってよいほど「カーシェアを導入してはどうか?」「カーシェアの導入は検討したのか?」というご意見・ご質問があります。

 

カーシェアは非常に便利で、私も某カーシェア業者さんの会員になって時々お世話になっています。

そんな便利なカーシェアのステーションがご自宅マンションの駐車場にできれば、至近距離にステーションができ、カーシェア業者さんから管理組合には駐車場賃料が入り、こんなに良いことはありません。中には、一般会員が2週間前から予約開始であるところ、ステーションとして駐車場を提供されているマンションの居住者さんは、3週間前から予約が可能だというような契約もあるようですから、尚更です。

 

私のような電車通勤の会社員“週末ドライバー”にとって、1,000~2,000円程度の入会金やカード代、1,000円足らずの月額基本料金、1時間数百円からの利用料金など、マイカーの購入費用や維持費に比べれば安いものです。

 

そうなれば、管理組合さんの収入は増え、居住者さんの利便性は向上する、良いことづくめで、長年の懸案であった駐車場問題に”解決宣言”が発せられそうですが、、、

 

ところで、、、

こんなに便利なカーシェアのステーションが、自宅マンションの駐車場にできても、皆さんがマイカーを持ち続けられますか?

マンションの駐車場契約を継続されますか?

 

当工事センターに頂くご相談の多くは、駐車場の収支改善、延いては管理組合の収支改善に関するものです。

収支改善という観点でカーシェアの導入についての意見を求められた場合、「お勧めできません」とお答えせざるを得ない場合が多いように思います。

 

カーシェアが、駐車場の収支改善に貢献する為には、

『自宅マンションの駐車場にカーシェアが導入されても、今駐車場を契約されている皆さんが、駐車場を解約しない(車を手放さない)』つまり、導入時点での駐車場使用料収入がカーシェアを導入されても減らない、ことが条件となります。

 

カーシェア業者さんから、居住者駐車場使用料よりも高額で、且つ駐車場に空きが増えれば、ステーション(台数)を増やしてもらえる(追加で賃料を払ってもらえる)場合はこの限りではありませんが、カーシェア業者さんから管理組合さんに支払われる駐車場の賃料は、居住者さんが支払われる駐車場使用料より安価なことが一般的ですから、カーシェアステーションとして駐車場を提供した結果、居住者さんから駐車場の解約が出てしまえば、管理組合さんの収支はマイナスになります。

 

このことが看過されがちです。

 

今ご自分が契約されている区画の隣の区画が、カーシェアのステーションになった。

入会金やカード代1,000~2,000円と月額1,000円足らずの月額基本料金と1時間数百円の利用料を払えば使用できるようになりました。

それでも、毎月数万円の駐車場代、税金、保険料、車検、ガソリン代等を負担して、ご自分の車を持ち続ける(駐車場を契約し続ける)と“皆さんが”仰るかどうかという話です。

 

※車1台を保有するコスト

車の1台保有すると、年間いくらのお金がかかるのかを計算してみました。

都心50km圏神奈川県防止の住宅地の月極駐車場を借り、週末ドライバーである私の場合、年間約36万円、毎月3万円の維持費を使っていました。この金額には車の取得費用は含んでおりませんので、実際にはこの2倍の6万円くらいを車に使っている計算になります。より駐車場賃料が高い地域ではこの金額はもっと高くなるでしょうし、車種や車の取得費用によってももちろん変わります。

 

あらためて計算すると、週末の買い物がなんだか贅沢なものに思えてきます。

うちの目の前の駐車場にカーシェアのステーションができないものでしょうか?

そしたら私も車を手放すかもしれません。

 

◎実際に起こった事例

・物 件 : 東京都心の分譲マンション附置駐車場

平面駐車場5区画、機械式駐車場12車室 計17台収容

・契約状況: 平面 契約3台(空き2台)、機械式10台(空き2台)

 

以前当センターにご相談を頂き、サブリースの提案をさせて頂いた都心部のマンション附置駐車場では、心配していたことが現実に起こりました。

当センターからは、平面について1区画当たり20,000円×2台、機械式については収容サイズが小さいこともあり12,000円×2台、計64,000円/月の条件で提案しました。

これに対して、カーシェア業者さんの提案は、機械式は対象外、平面区画1台あたり3万円×2台 計60,000円でした。

カーシェアステーションにすれば、平面区画を2台貸すだけで60,000円の賃料収入に加えて、便利なカーシェアが導入され、非居住者より1週間も前に予約ができる! 理事の皆さんのテンションは最高に上がりました。4台貸しても64,000円にしかならない当センターのサブリース提案が良き引き立て役になった格好です。

もちろん、居住者の解約リスクについても説明はしましたが、もう理事の皆さんの耳には届くことはなく、後日の総会でカーシェアの導入が決定されました。

それから半年ほどたったある日、管理会社の担当者さんから

『以前相談した〇〇マンションですが、機械式駐車場だけでもサブリースできますか?』

という連絡がありました。

「2台ですか?」

「いや、5台です。まだサブリースをお願いするかどうかは判りませんが、機械式駐車場から3台解約が出て、カーシェア導入前より収支が悪化してしまいまして、、、」

 

実際にこんなことも起こり得ます。

 

カーシェアは非常に便利なサービスで、積極的にお勧めしたいサービスです。

但し、駐車場の収支を改善した後、マンション内の福利厚生の拡充策として導入をご検討頂きたいと思います。

事例集一覧