2021/04/14
機械式駐車場 長期修繕計画書のトリセツ①

最近、「○○のトリセツ」というタイトルの書籍をよく見かけます。当工事センターの業務に関りがあるところで、『目からウロコ マンション管理のトリセツ(幻冬舎ルネッサンス新書)』は、個人的に興味深く読ませて頂きました。

これらの流れに便乗して、今回は『機械式駐車場長期修繕計画のトリセツ』なるタイトルにしてみました。タイトルに偽りあり!とお叱りを頂かないように、書き進めたいと思います。

マンションには必ず長期修繕計画書(以下「長計」と記します)があります。
長計に基づいて金額設定された修繕積立金を各組合員さんが毎月積み立てられ、その積立金が共用部の修繕に充てられます。近年では、計画通りに積み立てられているにも関わらず、いざ修繕をしようとすると『積立金が足りない』ということが起こることがあり、修繕積立金の値上げや一時負担金の拠出を求められる事例が少なからずあるようです。

長計をよく見てみますと、外壁補修や屋上防水、給排水設備に照明器具等々が並んだ表の一番端っこの方にひっそりと『機械式駐車場』の項目があります。
長計の中で機械式駐車場に関する項目は2行程度に集約されている場合が多い事もあり、本当にひっそりと、ほとんどの場合大して気にされる事もなく、誰の関心を引く事もありませんが、確実に記載されています。

なぜ積立金が足りない?

駐車装置を設置するタイミング、即ちマンション竣工のタイミングでは、駐車装置メーカーから駐車装置に関する長計が示され、これを集約されたものがマンションの長計に計上されています。
計画はありながらも、部品交換を長計通りに実施されている駐車装置にお目に掛かることはあまりありません、というよりも個人的には一度もありません。
計画されていた部品交換を実施されていないということは、即ち予算を使っていないことになりますから、本来であれば積立金に余裕があって然るべきですが、いざとなると積立金が足りない場合がよくあります。
使っていないのに積立金が足りない、なぜこんなことが起こるのでしょうか?

他の修繕等に予算を流用したか、当初の長計が楽観的過ぎた、通常はこのどちらかだと思います。

① 他の修繕等に予算を流用した

“流用”という表現は若干語弊があるかもしれませんが、駐車装置、或いは駐車場が独立会計になっている管理組合さんは稀だと思いますので、マンション等全体の管理の中で臨機応変な対応はあって然るべきだと思いますが、結果的に駐車装置の為に予算されていた積立金が不足することになった、というパターンです。

② 当初の長計が楽観的過ぎた

楽観的という表現が良いのか、物価や人件費等の想定が不十分であったという表現が良いのかわかりませんが、計画と実態に乖離があり、計画通り資金を積み立てていても実際の費用を賄うことができなかった、というパターンです。

ところで、、、

駐車装置のリニューアル(入れ替え)の際のメーカー選定の場合に、各メーカーから長計を取り寄せて、リニューアル工事の見積金額と併せて、長計上の部品交換の合計金額の多寡を検討材料にしようとされる場合があります。
つまり、リニューアル工事費用+向こう25年~30年間の維持費の合計額でメーカーを比較・検討しようという考えです。
これは、“尤もらしい”話に聞こえますが、あまり効果があるとは思えません

経験則としては、管理組合さんに対して知識があることをアピールされようとする管理会社の担当者の方が、この方法を勧めたがる傾向にあるようですので要注意です。

 

長期修繕計画のトリセツ①
長計は、『確保すべき予算額の目安とすべきもの』と認識して頂く方が良いと思います。

メーカーが作成する長計には、

・耐用年数を保証するものでありません

・作成日現在の部品単価等を記したもので、物価変動等により単価が変わる場合があります

というようなコメントが記されています(※マンション全体の長計に集約される過程でこれらのコメントが省略される場合がありますので要注意です)。

言い換えれば、

「長計に記した交換時期迄部品がもつとは限らないし、記した金額で交換できるとは限りません」

ということになります。

◎ 一般的に駐車装置の長計はコンサバティブに試算されている印象ですので、交換時期については、長計上の交換時期より前に部品が壊れることは少ないように思いますが、単価については何と言えません。

冷静にお考え頂ければ、20年後、30年後の部品単価や人件費を確定できるはずがないことはお判り頂けると思います(これができるようであれば、投資で大成功できると思います)。

したがって、安価な長計(の合計額)はお得“感”はあったとしても、それが将来、実際にお得だとは限らないということです。

当初、長計の合計額が最も安価なメーカーを選択したものの、実際に部品交換の必要性が生じる10年後、15年後に長計通りの部品単価、工賃で部品交換ができるとは限りません。
その時になって『長計の単価より高いじゃないか!』と抗議しても、「この10年で部品の仕入れ値が上がっておりまして、今はこの金額でしか販売できません」と言われてしまえば、これに抗うことができる管理組合さんはほとんどいないのではないでしょうか?
そもそも、実際に部品の単価が上がったのか、そもそも当初の長計が作為的に安価な設定で作られていたのかの検証さえも容易ではありません。

何より怖いのは、、、

そして何より怖いのは、積立金不足です。
楽観的な長計に基づいて予算を組んだ結果、いざ部品交換をするときになって積立金が足りないという状況です。

マンション全体の積立金が不足し、「当初の長計が楽観的過ぎたのではないか!?」など喧々諤々修繕積立金の値上げを検討されている一方で、駐車装置の長計の合計額が安価な業者と手を組もうという管理組合さんが時々あります。

「マンション全体の楽観的な長計で苦労されているのに、なぜ駐車装置の長計だけより楽観的になろうとされるのですか?」

「外壁工事や屋上防水、給排水設備等々の値段が上がり、今後も上がるであろうという議論をされている一方で、なぜ駐車装置だけが値段が上がらないと思われるのですか?」

この問いかけをすると、管理組合の皆さんは頭を抱えられ、その傍らで長計の比較を勧めた管理会社の担当さんは硬直されます。

この話をすると、長計通りの部品交換や予算消化を推奨していると思われる場合がありますが、
それは誤解です。

長計を目安に予算を確保した上で、コスト削減策を講じて浮かせた予算を他の費用に充当する、或いは修繕積立金を値下げする

これが当工事センターの推奨する長計の使い方「機械式駐車場長期修繕計画書のトリセツ①」です。

次回、長期修繕計画書のトリセツ②をお送りします。

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