このリニューアル工事は、
『このメーカー』、『この管理会社』、『この管理組合』、『理事会』、『そして組合員おひとり
おひとり』の協力が無ければ出来なかった工事であった事を最初に申し上げておきたいと思います。
翻って、同じような協力体制が構築できれば、リニューアルに限らず平面化(埋め戻し)や部品交換
工事も、スムーズに、トータルで安価に施工する事ができるとも言えると思います。
施工事例 : 駐車装置リニューアル(総入れ替え)工事
所 在 : 神奈川県
属 性 : 分譲マンション(築25年)附置駐車場
装 置 : 横行昇降(縦列)式
台 数 : 40台
【旧装置】
本リニューアル工事は、超えるべきハードルが多い事案であり、工事完遂できた要因は数多あります。
その中で、3つのポイントをご紹介します。
ポイント①:建物の構造
本件に限らずリニューアル工事は、旧装置を設置する事を前提としたスペースに、旧装置とは
異なる機種、メーカーの装置を設置する場合が殆どです。
したがって、新装置候補として挙がった機種がそのまま入らない場合が少なからずあります。
例えば4列であった装置を3列に減らして収容台数を減らす、もともとハイルーフ仕様であった
車室を普通(セダン)仕様に変更する等の対応ができれば話はまだ簡単ですが、満車の場合や
権利関係の都合で台数を減らす事ができない場合には話が複雑になります。
多くの駐車装置は、メーカー/機種により製品規格が決まっており、このアレンジには各社消極
的です。
※ リニューアルの際に駐車装置は“受注生産(オーダーメイド)”であるとの説明がなされる為、
混同されがちですが、“カスタムメイド”とは限りません。
【旧装置解体中】
この駐車場は、当センターにご相談頂くまでにある立駐機メーカーさんから「対応できない」との
回答を得ておられました。現地で建物の構造を拝見して、他のメーカーさんが消極的になる理由も
察しがつきましたので、これに対応できる、装置のアレンジに柔軟に対応できるメーカーさんを
紹介させて頂き、着工に漕ぎつけました。
【旧装置解体済】
ポイント②:代替駐車場
当センターが最も苦労したのが代替駐車場でした。
マンション周辺は月極駐車場の稼働率が高く(絶対数が少ない?)、各駐車場とも満車か、空き
があっても1、2台。「3、4ヶ月間の代替駐車場として貸すために、長期のお客さんを逃す
リスクは負えない」月極駐車場オーナーの自然な考え方です。
企業の来客用駐車場等も交渉しましたが不奏功。
最終手段でコインパーキングの借り上げも検討しましたが、行政施設や病院が多い地域で稼働率
が高いコインパーキング、謂わば“ドル箱物件“を借り上げるには相応の料金が必要で、見積りは
概算で1,000万円を超えました。
この状況を理事会の皆さんにストレートに報告したところ、理事の皆さんのお仕事関係の企業様
の駐車場、地元のお知り合いのお宅の空きスペース等を提供して頂けるお話になりました。
加えて、他の組合員の皆さんからも、工事期間中ご実家や勤務先に保管できる方、事情があって
マンションの駐車場は使わずに空けていると仰る方等が名乗り出て下さいました。
小口でお借りできた月極駐車場と合わせて、何とか収まりました(中には1キロほど離れた駐車場
をご利用頂いた方もいらっしゃいました)。
代替駐車場を請け負う機会が多い当センターでも、ご親類や地域、お仕事関係のネットワークには
敵わない、というのが正直なところです。
【新装置】
ポイント③:スムーズなコミュニケーション
ポイント①、②以外にもいくつものハードルがありましたが、これを乗り越えられた大きな要因
(勝因と言えるかもしれません)は、管理会社さんと管理組合さんのスムーズなコミュニケーシ
ョンにありました。
ともすれば管理組合さんと施工業者の板挟みになりがちなのが管理会社さんの立場です。
立場上管理組合さんには言いづらい事も多々あったと思います。
一方、理事会の皆さんも、辟易されるほど次々に持ち上がる課題にも粘り強くご対応頂き、
お蔭様で一切滞りのない、スムーズなコミュニケーションをはかる事ができました。
『(いろいろ面倒だけど)結局は自分たちのことだからね』
諸々議論をしている中で、理事長様から頂いた言葉です。
“本当に大変な工事”だったので、今回ほど「皆さんのご協力で完工できた」と思える工事は
あまり記憶にありません。