2022/08/19
施工事例:平面化(鋼製平面)による収支改善+α

【施工概要】

工 種  : 平面化(鋼製平面)

施 主  : マンション管理組合

物件種別 : 分譲マンション附置駐車場

横行昇降(地上2段地下1段)式 収容台数=5台×3基=15台

平面駐車場 収容台数=3台         総収容台数18台

築年数  : 26年

所 在  : 大阪府大阪市

施工対象 : 横行昇降(地上2段地下1段)式 収容台数=5台×2基=10台

⇒ 鋼製平面 収容台数=4台        総収容台数12台

施工前(イメージ)

施工後(イメージ)

【施工の成果】

機械式駐車場:横行昇降(地上2段地下1段)式 2基10台を平面化したことにより、向こう10年の駐車場収支が約1,310万円(1戸当たり40万円)の改善が見込まれる状況となりました。

 

×当初の向こう10年の駐車場収支

駐車場使用料収入  月額22万円×12ヶ月×10年

定期点検料金    30万円/年×10年

部品交換/修繕費用 1,000万円(修繕計画上の金額合計)

リニューアル費用  2,000万円        収支▲660万円

 

◎施工後の向こう10年の駐車場収支

駐車場使用料収入  月額15万円×12ヶ月×10年

定期点検料金    10万円/年×10年

部品交換/修繕費用 350万円(修繕計画上の金額合計)

リニューアル費用  700万円          収支+650万円

※駐車場の契約台数、及び定期点検料金の変更がない前提での試算

 

【背景】

本件駐車場は、総収容台数18台の内居住者が使用されていたのは10台に留まり、数年前から1台を近隣の非居住者に賃貸(外部貸し)され、7台をサブリース業者に賃貸されていました。

ここ数年は駐車装置も安定的に稼働し、かかるコストは定期点検のみであり、外部貸しとサブリースの収入で駐車場の収支も安定していました。

2年前に経緯は不明ですが管理会社さんから、機械式駐車場の平面化が提案されたそうです。「今後機械式駐車場にはお金がかかるので、900万円で平面化する方が経済的です」という提案で、それ自体は間違いではないと思いますが、如何せん収支の試算も示されなかったことから、廃案となったそうです。

そして昨年、修正修繕計画書が提示され、併せて部品交換と鉄部塗装の提案がなされました。

修正修繕計画については検証はなされることは無く、部品交換と鉄部塗装は総会で承認されました。部品交換は保守契約の元請業者である管理会社さんに発注することとなりましたが、鉄部塗装はある居住者さんの奔走によりかなり安価で他の業者さんに発注できることとなっていました。

◎理事長の気付き

部品交換と鉄部塗装が承認された後、理事長に就任されました。詳細な検討はされていなかったものの、感覚的に「ここで部品交換に修繕積立金を投じるより、外部貸しとサブリースを解約して(2年前に廃案になった)平面化を進める方が効率的ではないか」という疑問を持たれます。

 

【管理会社さんへの相談】

理事長の疑問を管理会社の担当者さんにぶつけたところ、意外展開になります。

理事長:部品交換にお金がかかるのであれば、サブリースを解約して平面化する方が

経済的ではないですか?

管理会社:外部貸しとサブリースを解約すると、管理組合の収入が減ります

理事長 :収入は減りますが、それ以上に支出が減るでしょう?

管理会社:確かに支出は減りますが、収入が減るのは、、、

理事長 :サブリースの導入に反対して一昨年平面化を提案してきた方(管理会社)が、

なぜ今度はサブリースの解約と平面化に反対するのですか?

 

管理会社:・・・

※数年前に駐車場の契約率低迷による管理組合の収支悪化を懸念され、サブリースを提案されたのは、現理事長でした。この時にサブリース導入に否定的な見解を述べられたのは管理会社の担当者さんだったそうです。とはいえ、決めるのは管理組合さんですから、組合内で協議の上でサブリースを導入されました。

 

【当工事センターへの相談】

管理会社さんの返答に納得できない理事長から、当工事センターにご相談を頂きました。

詳しくお話を伺い、資料等を拝見した結果、気になる点がいくつかありました。

 

・2年前管理会社さんから出された平面化の見積金額が高い

2年前に比べて今は鉄の値段(相場)が3割以上上がっていますから、見積全体では1割前後上がっている(今の方が高い)のが自然です。しかしながら、管理会社さんの2年前の見積金額は、最終的に当工事センターが手配した見積りより2割以上高いものでした。もちろん発注先が違えば見積金額が変わるのも当然ですが、それにしても高い、というのは直感的な印象でした。

 

・違和感ある修正修繕計画

ここで言う修正修繕計画は、駐車装置の元請業者としての管理会社さんから管理組合さんに提出されたものです。

そこには、今期(第26期)400万円、来期(第27期)600万円、その後10年間予算計上は無く、10年後(第35期)にリニューアルの予算が計上されていました。

管理組合という組織体の性質上、予算に計上されていなかった急な支出は極力避けたいものです。したがって、修繕計画は悲観的に策定されるのが一般的です。

今期と来期ある程度の部品交換を施すとは言え、その後8年間部品交換は一切必要無いという修繕計画には違和感を覚えました。また、この駐車装置は既に設置から25年を経過し、通常であればリニューアルの検討を始める時期であることを考えればなおさらです。

 

・不可解な部品交換

駐車装置の部品交換に限らず工事や作業は、細かく切り分ければ切り分けるほど費用が嵩むことは皆さん想像に難くないと思います。

昨年修正された修繕計画で今期と来期必要だとされた部品交換であれば、検討すべきは「まとめて安く」できないか、であります。

修繕計画は、10年、20年、30年先までの計画を立てるものですので、実際にはその計画に基づいて予算を確保しつつ、定期点検で各部品の実態を確認しながら、部品交換の範囲(種類)やタイミングを決めていくのが一般的です。

しかしながら、昨年修正した修繕計画での今年と来年に計画した部品交換であれば、少なくともその部分に限っては計画書というより見積書の性格が強いものだと思われます。

ところが、総会で決議されたのは、金額的には今期の計画額の半額程度、しかも修繕委計画書との整合性も確認されていません。つまり、修正修繕計画は無かったことにされていました。

後日この点について管理会社の担当者さんに尋ねても、答えは返ってきませんでした。

 

【当工事センターの対応】

1.平面化の見積り

当工事センターの協力業者のうち2社から見積りを依頼しました。地域、施工規模等を考えれば、両社の金額がどの程度のものになるかは予め分かっているものの、管理組合さんにとっては事実上「複数社の比較」以外に合理性の検証ができませんので、必要なプロセスです。

2年前に管理会社さんが出された見積り(施工業者さん)と一対一で比較することもできましたが、その見積金額があまりにも高かったこと、また同じ鋼製平面でも施工方法が異なることから、当工事センターで2社手配しました。

2.収支シミュレーション

シミュレーション①:定期総会で決議された部品交換と鉄部塗装+修正修繕計画通りの部品交換、リニューアルを実施した場合

シミュレーション②:2基10台を平面化した場合(継続する1基5台については、①に準じて試算)

シミュレーション③:3基15台を平面化した場合(参考)

  ⇒1と2の差異は、向こう10年間で1,300万円(40万円/戸)に上りました。

 

【理事長の葛藤】

平面化の見積りと収支シミュレーションを踏まえると、直近の総会決議、つまり外部貸しとサブリースを継続し、駐車装置に部品交換と鉄部塗装を施すことが、少なくとも経済的には不合理であることは明らかとなりました。

とはいえ『総会で決まったこと』です。これを理事長の一存で覆すことは許されませんから、方針転換を図るにはあらためて総会に諮る必要があります。管理組合の円滑な運営、或いは居住者間の人間関係を考えれば、一度決まったことを覆す議案を上げること自体が憚られます。特に鉄部塗装を安価にすべく奔走された居住者さんの努力を無にするような話ですからなおさらです。

一方で、経済的に不合理、つまり管理組合が損をすることに理事長として気付きながら気づかなかったふりをすることは、理事長の職責を果たすことになるのか、という思いもありました。

かなり悩まれた結果、部品交換と鉄部塗装を総会で決議されるにあたって、その前提となる経済合理性の検討が不十分であったことは間違いない為、その検討結果の共有の意味も込めて方針転換(=本件平面化工事)を総会(その前に理事会)に諮ることを決断されました。

【理事会・意見交換会での検討】

予想通り議論は白熱しました。総会で決議されたことは皆が損することだと判ってもその損は甘受することで管理組合の安定的な運営を優先すべきだという「安定的運営」の考えと、総会で決議されたことでも、その前提条件に疑義が生じたり、新たな事実等が判明したりした場合であって、まだ軌道修正が可能なタイミングであればあらためて(臨時)総会等で管理組合の意思確認をすることでフレキシブルに合理性を優先すべきだという「合理的運営」な施策を選択していきたいという考えが対峙することになりました。

加えて、管理会社さんには独自の思惑があったようで、「皆様がお決めになることです」という中立の立場に立ちながら、事実上「安定的運営」派側を後押しする動きを見せられました。本来は、安定的運営と合理的運営が対立しないように当初から慎重に検討すべきところではありますが、これには通常管理会社(担当者)さんのスキルや誠実さが大きく関与するのが実態です。今回は残念ながら管理会社さんの“思惑”が影響したのではないかと思っています。また、多くの管理組合さんでは、このことにどなたも気づかれないまま流されていくことになりますが、本件では理事長がそのことに気付かれた、ということだと思います。

結果として、(臨時)総会に諮られ、本件平面化が承認されました。

【その他の問題点】

本件駐車場には、収支問題の他にも問題がいくつかあり、今回の平面化でそのうちのいくつかは解決、或いは軽減することができました。翻って、残念ながらそれらのすべてを解決することはできませんでした。

[解決できた問題点]

・規定サイズオーバー車両の駐車(契約)

⇒当駐車場には、一部規定サイズオーバーの車両が駐車されていました。

「いつの間にか大きな車に買い替えられていた」という事でした。

その車をお買いになる際の車庫証明をどうされたのか等いくつかの疑問(疑惑?)はありますが、事実として駐車されていました。残念ながらこれは多くのマンションの駐車場でみうけられる問題です。

平面化により収容サイズ制限が緩和され、結果として規定サイズオーバー問題が解決しました。

 

[軽減された問題点]

・修繕計画

⇒上記の通りかなり不可解な修繕計画を元に様々な予算編成がなされている状況

にあり、今後予算が不足することが予想されていました。

本来であれば、様々な思惑を排した修繕計画を策定して、それに基づいた予算修正をお勧めしたいところではありますが、今回はそこまで踏み込むことができませんでした。

しかしながら、3基15台の機械式駐車場のうち2基10台を平面化したことで、“単純計算では”、今後の予算と実績の差異の振れ幅は3分の1になりました。

 

[残された問題点]

・外部収益に係る未納税問題

本件は、空き車室のほとんどをサブリース業者に一括で貸し出すことで外部からの収入を得て来られました。これについては、きちんと申告され、相応の税金を納めて来られました。

また、1車室は、非居住者に賃貸されております。これもいわゆる“外部収益”ですから、申告をして納税しなければなりませんが、なぜかこの分については申告されていません。

今回平面化工事により総収容台数が減ったためサブリース業者との契約は解約となりましたが、非居住者に賃貸されている1車室分の賃料収入については、申告/納税が必要ですが、これをどうされるのか、理事会で議論されているところです。

 

最後に、、、

今回の事例で管理会社さんがなぜこのタイミングでの平面化を嫌がった(としか思えない)のか?

何となく想像は付きます。ここに気付かれるか否かが、管理組合さんの運命の分かれ道かもしれません。

 

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