2021/06/24
施工事例:平面化 ~リーダーシップと合理的判断により実現した平面化~

【工事概要】

施工事例 : 機械式駐車場平面化工事

所 在  : 千葉県

属 性  : 分譲マンション(築14年)附置駐車場

撤去装置 : 昇降横行縦列式(地上3段地下1段) 12台収容

       ターンテーブル1基

 

【 背 景 】

今回のご相談を頂いた当初の感想は、『決断(施工)できれば経済的メリットは大きいものの、多分無理だろうなぁ』でした。

事の発端は、駐車装置のトラブルでした。

ある居住者さんが、駐車場から車を出庫する為、鍵を差し、車室番号を入力、可動ボタンを押し、何となくご自分の車を眺めていたところ、みるみるうちにご自分の車が傾き始めたそうです。この間多分数秒であったはずです。

この居住者さんはとても“肝が据わった方”で、冷静に非常停止ボタンを押して、駐車装置を緊急停止されました。

異常が起これば緊急停止ボタンを押す、通常時であれば簡単で当然のことです。但し、突然自分の車が自分の頭上3mのところで傾き始めた状況の数秒間で、どれだけの方が冷静に非常停止ボタンを押せるでしょうか?

多くの方は、何もできないまま車が落下するか、駐車装置が故障で停止するまで何もできずに体が硬直するか、ただオロオロするかのどちらかだと思います。

閑話休題

後の調査で、原因はチェーン送りがスムーズに進まなかった、いわゆるチェーンの“フン詰まり”です。車を乗せたパレットを吊った4本のチェーンの内1本がスムーズに送られなかったことから、パレットが車諸共傾いたというわけです。

メンテナンス業者さんに、修繕の見積りを依頼されましたが、交換を先送りしてきた部品がいくつかあり、この駐車装置を安全に稼働させるためには相当な費用が必要であることが判りました。

ここで、「この駐車装置を維持し続けることは、経済的なことなのか?」という疑問を持たれた理事の皆さん主導で、平面化の検討を開始されました。

が、次の3つの課題をクリアできることが必須条件であり、多くの管理組合さん、オーナーさんは、この課題に対峙しただけで、戦意を喪失されます。冒頭、『多分無理だろうなぁ』という感想を持ったのはこのためです。

課題1:縦列式駐車装置

この駐車装置は、上下に4段(地上3段地下1段)、横に2列、そして前後に2列の駐車装置です。前後2列×横2列=4台分のスペースの中で駐車装置によって車両(パレット)をパズルすることで車12台の格納を可能にしていたわけです。ここから駐車装置を撤去してしまえば、車は4台、ではなく2台しか置けなくなります。4台分のスペースでも、4つの区画に車4台を駐めてしまうと、駐車装置が担っていたパズルを人による車の運転で行うしかありません。言い換えれば、後列の車を出庫する為には、前列の車を移動させて、後列の車を出庫した後、前列の車を元に戻す、この作業が必要です。面倒なことこの上なく、そもそもこれを行うためには、都度声をかけて前列の方に車を移動してもらうか、お互いに車のカギを持ち合うしかありません。

縦列式駐車装置の平面化においては、この課題を避けて通ることができません。

今回の駐車場で言えば、収容台数が12台から2台と極端に減ることになります。

12台が2台となれば、いかに経済合理性があるとはいえ、漠然とした不安に駆られても不思議ではありません。

課題2:立ち退き

課題1の通り、12台から2台に減れば、元々の契約台数が2台以下でない限り立ち退き(解約)が必要になります。

今回の駐車場には、11台の契約がありましたので、平面化を実行する場合、9台(人)が立ち退き(解約)を迫られることになります。11名の内9名の方に賛同が得られるかどうか、事実上この点が最大の課題でした。

課題3:収入源

平面化することで、“収”“支”の“支”は削減されます。但し、同時に“収”入も削減されます。

当然収支シミュレーションをした上で、検討を進められたわけですが、収入が減ることへの漠然とした不安は、あって然るべきです。

これらの課題を以下の対応でクリアしました。

対応1:経済合理性についての“理事長の主体的”な説明

地域柄賃料相場は高くなく、残念ながら満車になっても今後の維持費や将来のリニューアル費用は賄えないことは明らかでした。特に縦列式の駐車装置にはお金がかかります。この駐車場運営を業として行っておられるとしたならば、即解体です。但し、管理組合さんは、駐車場業者ではありません。費用がかかっても、必要な設備として維持すべきだという考え方には、一理も二理もあります。

しかしながら、ご多聞に漏れずこの管理組合さんもマンション全体の修繕積立金会計に余裕はありませんから、削ることができるところは削りたい、という考え自体に反対の声はありません。

ポイントは、この点に関する説明を、意見交換会や総会の場で、理事長さんがご自身の言葉で説明されたことでした。

いくら合理的な説明であったとしても、業者の立場から説明されると受け入れられない場合が少なくありません。今回の理事長さんは、“肝が据わった方”で、ご自身の意見として堂々と説明されました。ちなみに、“肝が据わった方”は2度登場しますが、同一人物です。

対応2:立ち退き後のケア

「駐車装置の解体が決まりました。後は皆さんご勝手に」というわけにはいきません。

立ち退きを求められる9台(人)の方々の移動先を予め用意しました。これについては当工事センターがお手伝いしました。

駐車場の好みは人それぞれですので、周辺の月極駐車場の所在、種別、賃料、諸費用等、その他条件等を予め調べ、スムーズに移動できるような段取りを整えました。幸い1ブロック先に駐車場が見つかり、好み等の関係で他の駐車場を選んで契約された方もおられましたが、駐車場難民は、お一人も発生しておりません。

今回の平面化案件は、工事自体は至ってシンプルなものでしたが、上記のような事情から管理組合内の合意形成が非常に難しい案件でした。

しかしながら、理事長さんをはじめ理事会の皆さんのリーダーシップと管理組合の皆さんの合理的な判断が、平面化を実現させ、将来に向けて数千万円のコスト削減を可能にされました。

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