2021/11/05
施工事例:平面化 ~ 案外効果的な小規模駐車装置の平面化 ~

【駐車場・工事概要】

・工事概要:立体駐車装置解体・撤去・平面化(鋼製平面)

・施 主 : マンション管理組合

・所 在 : 神奈川県

・築年数 : 24年

・駐車装置: 単純昇降(地上1段地下1段)式 収容台数=2台

・工 期 : 2日間

        施工前

                                施工後

 

マンションの中に、立駐機が1基:2~3台だけある場合、さらに空きがある場合 “さっさと撤去して平面化する方が良い” とみんなが何となく思いつつも、対応は後回しになり、いつの間にか議論さえも立ち消えになっていることがよくあります。そして、撤去されないまま残された駐車装置に、定期点検費用や部品交換費用を投じ続け、振り返ればかなりの修繕積立金を使っていた、という事にもなりがちです。

 

『それは規模に関わらず駐車装置全般に共通する話でしょう?』

という声が聞こえてきそうですが、小規模な駐車装置では、その傾向が強くなる傾向があります。

 

それはなぜでしょうか?

 

定期点検や部品交換にかかる費用が少額である、或いは少額に“感じられる”ため、というのが理由の一つではないでしょうか?

 

例えば、収容台数2台の駐車装置と同100台の駐車装置では、ある部品の数は単純計算で50倍の差となります(もちろん単純に50倍にはならない部品がほとんどですが)。

1万円の部品を100個であれば部品代は100万円、同じ部品が2個であれば2万円です。理事長や理事会の権限はそれぞれだと思いますが、同じ単価の部品交換であったとしても、2万円であれば理事長の権限で発注できるところ、100万円となれば理事会、或いは総会決議事項ということもあるのではないかと思います。

発注金額が比較的少額な費用の部品交換は、その単価や発注回数に関わらず発注までの手続きは簡易的に進められる場合がほとんどです。

 

一方で、機械式駐車場の平面化工事のように発注金額が高額になれば、発注回数が1回であっても発注までの手続きは煩雑なものになります。もちろん、管理組合の健全な運営の為には当然のことではありますが、その経済公理性に関わらずその手続き、延いてはその施策自体が敬遠されがちです。

駐車装置の規模に関わらず、今ある駐車装置を撤去し平面化するという決断は簡単なものではありません。いくら小規模だとは言っても工事には多額の施工費用が必要になりますし、今空きがある場合でも今後駐車場需要が増える可能性もあります。

その検討や合意形成にエネルギーを注ぐよりは、目の前にある数万円の定期点検や部品交換(修繕)を発注する方が簡単でしょうし、そのことを他の管理組合員の方々から責められることもまずないでしょう。

そして、数万円の部品交換を発注することで『駐車場に関する議論は終了!』ということで平面化の議論も立ち消えになります。

ところが、総額が大きくないという理由で安易な支出を繰り返していけば、少しずつ確実に管理組合の修繕積立金会計にダメージを与えていきます。

 

【割高な費用】

小規模な駐車装置を維持する為の定期点検費用や部品交換費用は概して割高になります。

1万円の部品をたった1個(1台分)交換する場合でも、仮にその交換作業が1時間で終わるものであっても、1万円ではすみません。交換作業にあたる作業員の人件費用や諸費用がかかります。部品を10個(10台分)までは、人件費用や諸費用は変わらない、というようなことも少なくありません。

『部品代より人件費用の方が高い』これは業界問わず様々なところで聞かれるフレーズだと思います。

1万円の部品を交換するのに人件費用等が3万円かかるとすると、1個の部品を交換するのに費用は4万円、10個でも人件費用等が同じだとすると、10個の部品を交換する場合は13万円(1万3千円/個)ということになります。4万円/個と1万3千円/個、駐車装置の規模によって、これほどの差が付きます。

これは小規模な駐車装置の宿命です。

 

【長期修繕計画との乖離】

割高な費用から派生して、『長期修繕計画と実態の乖離』が大きくなりがちだという問題があります。

長期修繕計画上の駐車装置修繕費用は、駐車装置の規模に関わらず“一般的な規模”の駐車装置を基準とした費用で計画されていることが多いように思います。前項の例によれば、計画上は1万3千円となっているところ、実際には4万円かかる、比率はそれぞれですが、計画と実支出の差は開く一方です。

近年、材料費用や人件費用の上昇により修繕積立金の値上げを議論されている管理組合さんも少なくありません。そこにこの駐車装置の修繕費用の件が拍車をかける事態にもなりかねません。

 

【平面化工事も割高?】

規模が小さい場合に割高になるのは、駐車装置の維持費用(メンテナンス費用)だけではありません。

残念ながら平面化工事の費用も割高になります。

同じタイプの一般的な規模の駐車装置の平面化工事に比べ、今回の平面化工事の施工費用は、1,5倍くらいの金額でありました。しかしながら、トータルで考えたときに管理組合さんの支出を大きくするのは、細かい作業/工事を何度も行うことですから、駐車装置に係る工事/作業を1回で終らせる平面化工事は、支出を抑える案外有効な施策となりました。

額面数百万円の平面化工事の見積書を目にされたとき、年間数万円の定期点検でとりあえずお茶を濁したくなるのが人情です。また、今回撤去した駐車装置は、すぐに修繕をしなければならないような不具合が指摘されていたわけでもありませんでしたから、『来期の理事の皆さんにバトンタッチしたい』という気持ちになっても不思議ではありませんでした。実際にそのように来期へ、来期へと先送りにされ、少しずつ修繕積立金会計を毀損されている管理組合さんを数多知っています。

にも関わらず今回の平面化工事が実行できたのは、理事会のみなさんと管理会社の担当者さんの責任感と推進力の賜物であったと思います。

ちなみに、メンテナンス(定期点検や部品交換)を一切停止し、1階部分を事実上の平面駐車場として使用されている駐車装置(主に単純昇降式)を時折見かけますが、このような事例も台数が少ない小規模な駐車装置に多いような気がします。これは収容台数の多寡に関係なく非常に危険な施策です。

駐車装置のメンテナンスを停止し事実上の平面駐車場として使用することに危険性についてはまたの機会にご紹介します。

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