施工事例
2021/08/11
施工事例:リニューアル 築浅物件でのリニューアル ~やらない理由~ 

今回のリニューアル(一部平面化)工事は、実施することで大きなコスト削減効果が見込まれるものの、“やらない理由”がいくつもある事案でした。当センターに頂くご相談の中には、駐車場収支改善の為にやるべきだと頭まで解かっていながら、この“やらない理由”によって見送られたり、先送りされたりする場合が少なくありません。今回のリニューアル工事は、理事の皆さん、管理組合員皆さんの理解力と決断力、加えて管理会社担当者さんの推進力が無ければ実施できなかった事案でありました。

類似の事案で浮上する“やらない理由”をいくつかご紹介したいと思います。尚、例示する“やらない理由”のすべてが今回の管理組合さんに当てはまったとは限りませんが、少なくとも一つでもクリアできないものがあれば、見送られていた工事=コスト削減施策であることは間違いありません。

【駐車場・工事概要】

・所 在 : 東京都

・築年数 : 14年(ご相談を頂いたタイミングでは13年)

・駐車装置: 昇降横行式(地上4段)40台

・施 主 : マンション管理組合

・工事概要: 駐車装置縮小リニューアル+一部平面化

旧駐車装置を全て撤去、収容台数25台の新装置を設置し、余剰スペースを平面駐車場化

・特殊事情: 分離不可能な駐車装置

通常であれば、空き台数分の駐車装置だけを解体・撤去し、(一部)平面化することも検討すべき事案でしたが、駐車装置が一体構造になっている為に(一部)平面化ができない駐車装置でありました。

【施工前】約40台の昇降横行式駐車装置

【施工後(駐車装置)】25台収容の昇降横行式駐車装置

【施工後】縮小リニューアルによりできたスペースを平面駐車区画に

やらない理由① : まだ早い、もったいない

駐車装置の耐用年数は、通常25年~30年と言われています。『30年使えるものを14年で取り壊すだけでももったいないのに、さらに新しいものを買うなんて、、、』当センターからリニューアル時期の前倒しの提案したほとんどの管理組合さんの最初の反応です。

モノを大切にする精神は尊いものであり、「まだ使えるものを、、、」という心情は充分に理解できますが、当センターにご相談を頂くほとんどの管理組合さんの目的は“コスト削減”です。コスト削減を目的として考える場合、築年数は“早いか遅いか”の基準にはなり得ません

極論すれば、竣工直後(築0年)でも、以後の駐車場需要(空き台数)が確定できれば、すぐに平面化・縮小リニューアルを検討しても早過ぎることはありません。決断が早いほど空き続ける車室(区画)にかかる維持費を削減することができ、トータルでの削減コストも大きなものとなります。

漠然とした「まだ早い」、「もったいない」で無駄なコストを負担されている管理組合さんは少なくありません。

 

やらない理由② : もうしばらく様子を見よう

理事の皆さん、或いは管理会社の担当者さんにとって、大きな決断(支出)は、先送りしたい(自分の人気が終わってからにしたい)というのが人情です。

例えば、当センターが提案する『2,000万円のリニューアル工事』とメンテナンス会社さんが提案される『500万円の部品交換工事』、二つの提案を机上に並べたときに、長期的な合理性は度外視されて、500万円の部品交換が選択されがちです。

この場合、部品交換は断続的に続くことを忘れることで判断を誤られます。

一部の部品を交換しても、ほどなくして次の部品交換が提案されます。その時に、なぜか前回500万円分の部品交換を実施した事実が、今回の部品交換を実施する理由になる場合があります。

過去の事例に従って物事を進めて行くことが、ストレスが小さい、ということなのかもしれませんが、数年経って振り返ってみたときには「あの時思い切ってリニューアルしていた方が安上がりだった」という事になると思います。

 

やらない理由③ : 駐車場の問題は、駐車場契約者だけで

駐車場の収支が、管理組合の会計から独立していることはほとんどありません。

竣工当初は、駐車場の一定の契約率が維持されることを前提に、駐車場使用料が管理会計や修繕積立金会計に組み入れられることが計画されています。

現実問題として、駐車場の契約率が予定レベルに達していないことから、駐車場に係るコストばかりにフォーカスされ、延いては「駐車場を契約している方のために管理組合がコストを負担している」という誤解に発展し、「駐車場に係るコストは、契約者だけで負担すべきだ」という意見になるようです。

一方で、駐車場契約をされている方々の立場に立てば、「自分たちのために駐車場を作ってもらったのではなく、最初から駐車場が付いているマンションを購入し、駐車場使用料を支払う事で管理組合の会計の健全化に貢献している」ということになると思います。

客観的には、「駐車場使用料を支払う事で貢献している」というお考えの方が、合理的なものに思われます。

この誤解、或いは意見の対立が解消されない限り、「駐車場の契約をしていない私たちの積立金を駐車場に使う事には反対だ」ということで、合意形成ができません。

 

やらない理由④ : 工事ストレスはイヤだ

駐車場の平面化やリニューアル工事は、謂わば外科手術のような施策ですから、当然ながらストレスを伴います。

工事に伴う主なストレスは以下の通りです。

・作業音や振動、粉塵等の発生

・代替駐車場の利用

・自転車等の導線の制限

特に、代替駐車場については、複数の駐車場に跨る場合が多く、近くの駐車場を利用できる方と遠くの駐車場をご利用頂かなければならない方、屋内の方と屋外の方、機械式駐車場の方と平面駐車場の方、様々な条件の差が出てきます。

単にマンションの駐車場を使えないだけでもストレスであるところに、不公平感が加わることで、ストレスが増大します。

代替駐車場がネックになって前に進めない工事・施策は多いものですが、単に代替駐車場が見つからないというだけではなく、中には、近い/遠いは不公平だ、という類の理由で話が纏まらない工事もあります。

 

今回のリニューアル工事を検討される過程でも“やらない理由”はいくつか浮上しました。

特に築13年(検討開始時)という事であれば、“やらない理由①”で、7~8割は実現できずに終わります。“やらない理由”を乗り越えられた管理組合さんが、コスト削減を実現できる好例であったと思います。

 

 

 

 

 

 

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