長期修繕計画、これは機械式駐車場に係る予算を編成するには重要なものです。
しかしながら、これに縛られてしまう、正確には“中途半端に”縛られてしまうとあまり良い結果は得られません。
センターでは、長期修繕計画上の時期よりも前倒しでリニューアル(駐車装置の入れ替え)をお勧めすることが
しばしばあります。
その場合の会話は、決まって次の通りになります。
工事センター : こんなに高額な部品交換をするくらいなら、思い切ってリニューアルを
管理組合に勧めてみてはどうですか?
管理会社担当者 : 長期修繕計画上、リニューアルは〇年後なので、まだできません。
工事センター : 今まで、長期修繕計画通り部品交換をして来られましたか?
管理会社担当者 : いいえ
工事センター : ではなぜリニューアルの時期だけ長期修繕計画に拘るのですか?
管理会社担当者 : 、、、、、。
リニューアルの前倒しに消極的な理由(本音)を担当者に聞いてみると
・管理会社担当者が駐車場をリニューアルした経験がない
・予定外のリニューアル=高額な支出は、なんとなく管理組合に提案しづらい
・部品交換よりリニューアルの方は対応が大変そう
・既に部品交換を管理組合に提案してしまったので今更撤回できない
・部品交換を担当者自身の実績に見込んでしまっている
・メーカーから出てきた提案を管理組合に出しただけで、そこに担当者自身の意思はない
おおよそこんなところです。
以前とある管理組合の理事長様からセンターに直接頂いた相談です。
「主要台数5台の駐車装置について、部品交換と塗装修繕合計700万円分の提案が
管理会社から上がってきましたが、これは妥当な金額でしょうか?
駐車装置のリニューアルした方が安いのではないかと管理会社に尋ねましたが
『リニューアルは長期修繕計画上8年後ですし、何千万円もの費用が掛かります』と
言われて一蹴されました。リニューアルは本当に何千万円もするものでしょうか?」
この管理組合でもご多分に漏れず長期修繕計画通りの部品交換は実施されていませんでした。
これまで先送りにしてきた部品交換をまとめて実施する場合はそれなりの金額にはなります
(それにしても700万円は高過ぎますが、、、)。
長期修繕計画を誰かが恣意的に持ち出したり無視したりしていては、結局誰かが得をして
“他の誰か”が損をします。そして、管理組合は“他の誰か”になりがちです。
この管理組合では、最終的に約600万円で駐車装置をリニューアルされました。
そして、リニューアルにより以下のメリットが得られました。
・700万円の部品交換を施した中古(既存)の装置の代わりに、600万円で新らしい装置が
設置された(装置のリニューアル=耐用年数の更新)
・収容サイズ制限が若干緩和された
・装置が塗装から溶融亜鉛メッキになった(錆に強く、将来の再塗装費用が削減された)
管理会社担当者にお話を伺ってみたところ、以下のような本音が聞けました。
・メーカーから、これだけの部品交換をしないと安全性を保証できないと言われて
そのまま管理組合に提案した。
・リニューアルについて理事長から質問が出たが、リニューアルの前倒しという発想が無く、
ただ漠然と「長計上8年後」だと思い込んでいたので、受け入れられなかった。
・駐車装置のリニューアルは経験が無く、本当に何千万円か費用が掛かると思っており、
管理組合の予算の関係上“どうせ無理だ”と思った。
長期修繕計画は予算編成には極めて重要な意味を持ちますが、実際の施策は、状況に応じた
合理的な判断(選択)が必要です。