2021/10/05
コラム:機械式駐車場 長期修繕計画書のトリセツ②

以前、機械式駐車場 長期修繕計画書のトリセツ①で、「長期修繕計画書は、確保すべき予算額の目安となるものです」と書きました。

今回のトリセツ②では、「部品交換(費用)の妥当性の目安」としての長期修繕計画書について書きたいと思います。

長期修繕計画書の2つの点に着目頂ければ、部品交換(費用)の妥当性の目安が解かります。

目のつけどころ①:累積費用

駐車装置の設置から(≒マンションの竣工から)10年を経過する頃から、定期点検で部品の(経年)劣化や不具合が指摘され始めると思います。これに伴ってメンテナンス業者さんからは、部品交換の見積書が出されることになります。

部品交換は安くても数万円、交換する部品の種類や個数が増えれば数百万円、場合によっては1千万円を超えるような場合もありますから、感覚的に『高い!』と思われるのは仕方がない事だと思います。しかしながら、感覚的に高い!と言ってみたところで安くはなりません。 また、一般の管理組合員の皆さんに説明するという重大な責務がある理事の皆さんは、感覚的に高い部品交換が、合理的なものなのかどうかを検証する必要があります。

そこで出てくるのが、長期修繕計画書です。

管理組合さん、主に理事の皆さんに部品交換の提案をする際に、長期修繕計画書をご持参頂くようにお願いします。長期修繕計画書は数年ごとに見直され、更新されたものが配布されますが、できれば最初(マンション購入時)に配られた長期修繕計画書をお持ち頂ければより良いですし、駐車装置の内訳が入った最初の計画書があればベストです。

長期修繕計画書を見て、これまでに計画されていた部品交換費用の総額と、実施した部品交換費用の差額を確認します。駐車装置の内訳が入った計画書では、金額だけではなく部品毎の交換周期も確認できますから、併せて確認されることをお勧めします。

「高い!」と不満を漏らされていた理事の皆さんと一緒に計画書を見返してみると、多くの場合、計画の半分もお金を使っていないことや、耐用年数5年や8年の部品をもう15年も使い続けていることになどに気付かれます。つまりは、高いと思われていたお手元の見積(書)が妥当なものに思われる場合も少なくありません。

このことに気付かれれば、一般の管理組合員の皆さんへの説明もしやすくなるのではないでしょうか?

この作業を経由せず、メンテナンス業者を相手に高い!高い!!と連呼しても、メンテナンス業者との関係を悪化させるだけでなく、場合によっては交換する部品の数や種類を減らして総額を抑えるという苦肉の策で、問題を先送りし、故障リスクを拡大するというようなことにもなりかねません。

※長期修繕計画書の更新の際に、過去の部品交換実績を一切勘案せず、単に前年以前の計画を切り捨てられる場合がありますが、こと機械式駐車場に関して、この切り捨てを実施してしまうと、長期修繕計画書の存在意義がほとんどなくなります。

目のつけどころ②:リニューアル時期

長期修繕計画書を傍らに置いて頂くと、部品交換の妥当性を別の角度から検証することができます。長期修繕計画書の中で、機械式駐車場は2行に集約されることが多いようですが、2行目にフォーカスしてみます。2行目は通常『リニューアル』『更新』『入替』等表現は様々ですが、要するに駐車装置自体の耐用年数が到来し、新しい駐車装置に入れ替える(リニューアルする)ことで、一般的には25年目辺りにあります。

検討中の駐車装置が何年経過したものなのかによりますが、25年目に計画されているリニューアルの費用とお手元の部品交換の見積書の金額を見比べてみて、『あと〇年で廃止(リニューアル)する駐車装置に投じる額として妥当なのか』という検証ができます。

概してリニューアル時期が近くなる(古くなる)につれて故障は起こりがちです。

25年目にリニューアルを検討する時期になって『ここでリニューアルの検討をするのであれば、一昨年の部品交換は必要なかったのではないか?』『昨年の部品交換費用は、リニューアル費用の一部に充てた方が良かったのではないか?』という後悔は、長期修繕計画書をよく見てもらえば避けられるはずです。

 

『前のメンテナンス業者さんは、こんなにお金がかからなかったのに、業者を変えたら、部品交換の提案が次々に出されてお金ばかりがかかって、、、』という不満を聞くことがあります。そんな場合に経過年数とそれまでの部品交換実績を確認すると、ほとんど実施されておらず、『前の業者さんはお金がかからなかったのではなく、前の業者さんの時期がまだ装置が新しかったからお金がかからなかっただけなのではないですか?』となる場合が少なからずあります。

また、以前築18年のマンションで、メンテナンス業者を3回変更されている管理組合さんがありました。6年に一度変更されたのではなく、直近5年程度で3回変更されていました。業者さんから部品交換の見積りが上がってくる度に業者の『点検で手を抜いているからだ!』『こんなにお金がかかるはずがない!!』と技術力やモラル観に異議が唱えられ、業者変更を繰り替えされているようです。もちろん部品交換はほとんど行われておらず、当然故障も頻発しているそうです。

このような管理組合さんも、一度長期修繕計画書を見て頂ければ、少し考えが変わって、安全性と経済性を両立できるかもしれません。

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