どの業界/どの社会にも“都市伝説”的な話があります。
誰が言い出したのかわからない、本当なのか嘘なのかもわからない、裏付けもない、しかしながら、
上司から部下へ、先輩から後輩へ、業者からお客さんへ、前期の理事会から今期の理事会へ、脈々と
語り継がれ、否定することが憚られ、いつしか誰も疑わなくなった話
このような都市伝説的な話が、立体駐車場/駐車装置業界にもいくつかあります。
その一つに
『独立系メンテナンス業者に代えたら“メーカー保証”が効かなくなる』
というものがあります。
管理会社 : メンテナンス契約先を(メーカー系メンテナンス業者から)独立系メンテ
ナンス業者に代えたら、メーカー保証が効かなくなるでしょう?
だから、オーナーや管理組合には勧められないです。
当センター: メンテナンス契約をメーカー系メンテナンス業者と継続している間は、
永遠にメーカーさんが保証してくれるのですか?
管理会社 : 永遠かどうかは、、、
当センター: メーカーさんが保証されるのであれば、それを証する契約書か保証書の類
があると思うのですが、確認されたことはありますか?
管理会社 : 確認したことはありません。
当センター: これまでに、故障に伴う部品交換等で有償対応となったことはありませんか?
管理会社 : あります。
当センター: であれば、メーカー保証とは何ですか?
そもそも、メーカー保証の話は、どこから出てきた話ですか?
管理会社 : 、、、、
当センター: 仮に大きな事故やトラブルが起こった時に、従前の説明に反して『実は
メーカー保証はありませんでした』と報告したら、混乱しませんか?
一度ご確認頂いた方がよいと思います。
管理会社 : そうしてみます。
当センターでメンテナンス契約の相談を受け始めた頃、建物/マンション管理会社の担当の方と
お話をさせて頂く中で、『かなりの頻度で交わされた会話』で、今でもその頻度は然して変わり
ません。当然ながら『管理会社等からそのように説明を受けている』と仰るオーナーや管理組合
さんも少なくありません(全く気にされていない方が多いのも事実ですが)。
『(メーカー)保証』という、日本人が好むとされるワード(契約形態)が希望的に解釈され、
いつしか期間の概念が忘れ去られ、『保証』だけが独り歩きするのは何となく解る気はします。
しかしながら、後になって、特に保証が話題に上るような大きな事故やトラブルが起こった時
になって、『実は保証期間は終わっていた』となったら一大事です。
当センターが懸念するのはこれなのです。
もちろん当センターがすべての契約を把握しているわけではありませんので、永遠に(あるいは
長期間)メーカーさんが保証される場合もあるのかもしれませんが、あまり一般的ではない気が
します。
よく見かけるパターンは、次の通りです。
【よく見かける保証のパターン】
原 則 : 保証期間は竣工/引き渡しから『1年間』
延 長 : メーカー指定のメンテナンス業者(≒メーカー関係会社)との
メンテナンス契約継続中は保証期間を『5年まで延長』
当然ながら、保証の範囲も無制限ではなく、設計や製作、据え付けに問題があった場合等に制限
されている場合が多いように思います。
この“保証の定義”も、オーナーさんや管理組合さんのご認識とギャップはありませんか?
『独立系メンテナンス業者と契約したら“メーカー保証”が効かなくなる』
すなわち
『メーカー系メンテナンス業者と契約している間は“メーカー保証”が効く』
裏付けがないままこのような説明をお客さんにしてこられた管理会社の方、このような説明を
受けてこられたオーナーさんや管理組合さんは、
- 保証期間
- 保証の範囲
これらを一度確認されることをお勧め致します。
その結果、認識通り“メーカー保証が効く”のであれば安心ですし、そうでなければ一度全体の方針を
見直す必要が出てくるかもしれません。
誤った前提からは誤った方針しか出てきません。
ちなみに、
【よく見かける保証のパターン】がなぜ1年/5年の二重設定になっているのでしょうか?
もちろん理由は一つではないと思いますが、安全性を維持しながら経済性も追及するには、
この辺りにも思いを巡らす必要があると思います。
詳しくは別の機会に譲りますが、10年、15年と経過して、メーカー(系メンテナンス業者)
さんから、大きな金額の部品交換の提案を受けてから、慌ててメンテナンス契約の見直しを検討
し始めても、大きな効果が期待できない場合が少なくありません。
もちろん検討してみるに越したことはないものの、このタイミングで、その部品交換の提案を受け
ている駐車装置の状態であれば、リニューアルや(一部)平面化/埋め戻し等別の施策を検討され
た方が大きな効果が期待できるかもしれません。しかしながら、ようやくメンテナンス契約の見直
しを検討し始めたところに、リニューアルだ、埋め戻しだ、と言われても議論の混乱は必至です。
安全性の維持は前提として、経済性を確保しながら、余裕を持った検討(議論)ができるよう、
当センターでは新設、或いはリニューアルから当初の保証期間(よく見かけるパターンでは1年)
を経過するタイミングで、メンテナンス契約を見直されることをお勧め致します。